ドジャースも獲得狙う“メジャー屈指のスラッガー”の去就が「鈴木誠也」の今後を左右する理由…打点は“大谷越え”でもカブスから放出されるか
キャリアハイと過去ワースト
今季の鈴木の成績だが、本塁打32と打点103はメジャーリーグでのキャリアハイ。打点に関しては1点差ではあるが、ドジャースの大谷翔平(31)を上回っており、一時はナ・リーグ打点王のトップを走っていた(同タイトル争いはリーグ4位タイ)。タッカー慰留に必要な大型年俸分の資金をプールするためとはいえ、「チームトップの打点を稼いだ主軸バッターではなく、他の選手を」とも思えるのだが、そうではなかった。
「打率2割4分5厘と出塁率3割2分6厘は鈴木にとって過去ワースト。打撃に専念する指名打者としても物足りない数値です」(前出・同)
長打率は4割7分8厘、OPSも8割4厘で昨年よりも数値を落としている。つまり、今季の鈴木はキャリアハイと過去ワーストの両方を記録し、後半戦の長いスランプから抜け出せないままシーズンを終えてしまい、「売り時」という評価にあるようだ。そのため、地元メディア「カビーズ・クリブ」や「シカゴ・サン・タイムズ」では「来季終了後、彼との決別をためらわないだろう」とまで言い切っていた。
もっとも、鈴木の評価についてこんな見方もされていた。
「本塁打と打点で成績を上げた点はもっと評価されるべきですが、カブスのカウンセル監督は出塁率を重要視する指揮官なので、地元メディアの鈴木に対する評価も辛口なものになるようです。ただ、打率を含め、成績を落としたのは事実なので、これから先も長くメジャーリーグで野球を続けていきたいのであれば、新天地を求めたほうが良策。投手陣では、事実上のエースだった今永昇太(32)との契約延長をカブスが選択せず、彼自身も残留の権利を行使しませんでした。故障が原因とはいえ、昨季15勝3敗の好成績から9勝8敗まで成績を落としています。本人も『他に評価してくれる球団があるのなら』という考えになったのでしょう。鈴木も一つの球団に固執しないほうがいい」(米国人ライター)
複数年契約期間中の選手が大きく成績を落とすと、首脳陣だけでなく、ファンも厳しい目線を向けてくる。好機で打てないと、「今年もダメか……」とマイナスの評価をされる。しかし、新天地に行けば、首脳陣やファンの評価がマイナスからのスタートになることはない。好機で打てば、「前年のマイナスを補うもの」ではなく、プラス評価になる。シーズン中盤まで打点王のタイトル争いをした実績があるのだから、トレード拒否の条項を破棄する相談が持ち込まれても、落ち込む必要はないというわけだ。
「タッカーを引き止めるには、ドジャース、ヤンキース、メッツなど資金豊富な大都市球団に対抗できる高額な年俸を提示しなければなりません。カブスはポストシーズンマッチ進出に失敗したため、今オフは投打ともに補強が必至。カブスが鈴木を捨ててまでその資金を用意しているわけですが、補強資金が必要な理由はそれだけではないようです。カブスも埼玉西武ライオンズの今井達也(27)の獲得を狙っています」(前出・現地記者)
来季の打線は…
ゼネラルマネージャー会議初日の11月11日(現地時間)、カブス編成本部長のジェッド・ホイヤー氏(51)はタッカーの去就を含めた補強プランについて質問を受け、その流れで鈴木のことも聞かれ、「まだ(本人と)話していない」と答えた。米記者団は「トレード条項拒否権」の話かと思い、無言で聞き流した。それに慌てたホイヤー氏は「いや、WBCの話だ」と言い直したという。球団編成トップの反応からして、チーム再建のプランに鈴木の今後も絡んでいるのは間違いないだろう。
鈴木が渡米した21年オフ、複数のメジャーリーグ球団が球場施設だけではなく、本拠地のある町が如何に暮らしやすいかもアピールしていたそうだ。
当時を知るNPBの関係者によれば、そのピーアール会談に同席した鈴木夫人の畠山愛理さん(31)は、日本食の食材の値段や、子供を通わせる学校環境についても質問していたという。その質問が具体的で詳細だったため、「アナタは代理人も務まりますよ」と、各球団の担当者が褒めていた。
タッカー慰留の交渉が前進すれば、鈴木ともトレード条項の破棄について話し合わなければならない。もっとも、タッカーの慰留に失敗した場合、彼に匹敵するスラッガーを新たに獲得するのは困難である。
タッカーの慰留交渉に進展が見られないせいか、「残留交渉に失敗したら、何も残らない。鈴木中心で打線を再編しなければ」との現実的な声も出始めたそうだ。
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