「一発屋」「ゲテモノ歌手」と叩かれた「森進一」のハスキーボイス…救いとなった「歌謡界の大御所」の至言「歌は語れ、せりふは唄え」

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私生活でも波乱が…

 森には「まさか」のような騒動がいくつもある。07年のおふくろさん騒動がそうだろうし、もう一つは「婚約不履行事件」。一度も会ったこともない女性が、自称婚約者として森の子供を2人も産んだと名乗り出て、婚約不履行で損害賠償と慰謝料を要求する裁判を起こした。このスキャンダルに芸能マスコミが飛びついたことは言うまでもない。

 もちろん森の無実は証明されたが、さらに悲劇が襲う。この女性が鹿児島の実家を訪ねてきたことがあり、その時に母親が対応したのだが、母親はそれがこの女性の妄想のきっかけになったのではないかと悩み、自ら命を絶ってしまった。まさに無念。持ち歌の「おふくろさん」に込める森の想いの深さが理解できようというもの。この一件で森のマスコミへの不信感は一層、強まることになった。

 そして、さらなる「まさか」はやはり森昌子(67)との05年の離婚だ。昌子は「歌手を引退したら家庭を守りたい」という思いがあって、森はその考えを尊重した。C型肝炎という病気を抱えながらも、いい仕事をし、温かい家庭を築きたいと考え生きてきた森にとって、昌子から出てきた「離婚」の2文字はショックなどという簡単なものではなかった。

「子供もいるのに何を言ってるの?」と、思いとどまるように説得もしたが、昌子の意志は固かった。

 もっとも、引退した昌子は数々のヒット曲を歌い、美空ひばりにかわいがられた人気歌手であり、この連載でも書いたように、子供たちは世界的に名前が知れたミュージシャンとして活躍している。長男は「ONE OK ROCK」のTaka(37)、次男ははてな、三男はMY FIRST STORYのHiro(31)。森ファミリーは神様からこの世への授かりもののように思えてならない。

【前編は「幼き日の極貧生活、恩人との確執、突然の離婚…『森進一』波乱万丈すぎる人生を支えた『おふくろの教え』、あの名曲の裏に秘められた思い」

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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