「ドラフト裏話」 高校生がプロ入りに慎重姿勢!? 保護者は球団の“見切り”の早さを警戒 スカウトは「安定志向が強すぎるのはどうか」と苦言

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新たな時代に突入したドラフト会議

 一方、年齢が高い選手が多く指名を受けた点も今年のドラフト会議の特徴だった。主な例を挙げると、以下の選手が当てはまる。

小浜佑斗(24歳・沖縄電力→巨人5位)※中部商卒
増居翔太(25歳・トヨタ自動車→ヤクルト4位)※慶応大卒
片山皓心(27歳・Honda→DeNA4位)※桐蔭横浜大卒
九谷瑠(26歳・王子→楽天6位)※大阪大谷大卒→矢場とんブースターズ
飯田琉斗(26歳・ENEOS→ヤクルト7位)※横浜商科大卒
牧野憲伸(26歳・オイシックス→中日育成1位)※富士大卒
知念大成(25歳・オイシックス→巨人育成5位)※沖縄尚学卒→沖縄電力

※年齢=2025年時点の満年齢

 なぜ、“オールドルーキー”となる選手の指名が増えているのだろうか。セ・リーグ球団のスカウトに聞くと、次のような事情を話してくれた。

「ここ数年はプロ野球とアマチュア野球のレベルの差が大きくなっています。ドラフト上位で即戦力として期待されながら、なかなか通用しない選手が多いですね。そうなると、現時点で多少欠点があり、一軍の戦力になるには時間を要しても、プロで活躍できる将来性やポテンシャルがある選手のほうが評価されやすくなります。今年で言えば、佐々木麟太郎や平川蓮(仙台大→広島1位)、エドポロ・ケイン(大阪学院大→日本ハム2位)らは、その最たる例でしょう。とはいえ、監督や現場からは必ず即戦力となる選手が欲しいという要望があり、それを無視するわけにはいきません。そのため、年齢の上限を広げて、選手を探すという考えが出てきています。また、独立リーグやファームの2球団(オイシックス、くふうハヤテ)は、NPBの二軍ともよく試合をしており、力量が把握しやすい。今後も、同じような流れは続いていくと思いますね」

 そして、独立リーグやファーム球団だけではなく、米国の大学でプレーする石川ケニー(米ジョージア大→オリックス6位)が指名された。今年のドラフト会議の“隠し玉”として注目を集めた。

 石川は、母親が米国人であり、ハワイで生まれた。小学生の時に日本に移住して、明秀学園日立に進学した。3年生の時には、春夏の甲子園に出場。その後、亜細亜大に進み、1年生でリーグ戦に出場していたが、昨年、米シアトル大に転学し、今年から米国で屈指の名門校であるジョージア大学で活躍している。高校時代から二刀流で活躍し、大学進学後は、投手として才能を開花させ、150キロ以上の速球を投げる。

「正直、オリックスが石川を6位で指名したことは驚きました。スカウティングの範囲や選手に対する評価方法も、球団によってかなり違いが出てきていると思いますね」(パ・リーグ球団のスカウト)

 高校生選手が減少、年齢が高い社会人選手が増加、そして、海外の大学で活躍する選手が指名される――。新たな時代に突入したことを感じさせる2025年のドラフト会議だった。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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