「原潜保有論」が急浮上するも…最新鋭の国産ディーゼル潜水艦「たいげい型」は原潜を凌駕する能力 専門家は「敵国にとっては相当な脅威です」

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原潜と互角の「たいげい型」

 さらに「たいげい型」には世界一の“静粛性”という武器がある。水中は電池で動くので全く音がしない。一方、原潜は意外に騒音が大きいという。

「確かに原潜所有国は今も“静粛性”を向上させようとしのぎを削っています。ただし、原潜とは要するに艦内に原子力発電所を積んでいるわけです。原子炉は動かすと止めるのが大変です。今日は稼働させて発電し、明日は休ませる、ということは基本的にできません。どれほど潜水艦の防音に注力したとしても、原子炉の発電に伴う音を完全に消すのは難しいと言われています。一方、海自の『たいげい型』は水中を電池で動きます。そのため艦が静止すれば高いレベルの静粛性を達成できます。つまり乗用車にたとえると、原潜はアイドリングを止めることができません。一方の『たいげい型』はエンジンを完全に停められます。高い静粛性で敵艦を待ち伏せする戦術が可能であり、これは敵国にとっては相当な脅威でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 原潜の性能が「たいげい型」を完全に凌駕するなら建造計画も理解できる。だが、それほど差はないということになる。

トマホークを搭載する「たいげい型」

「おまけにアメリカは日本に巡航ミサイル『トマホーク』の売却を決めました。日本は何度かアメリカに購入を依頼してきたのですが、常に断られていたのです。そのため防衛省は軍需メーカーにディーゼル潜水艦から敵国の軍事基地を攻撃できるミサイルの開発を発注していました。ところがトマホークの購入が決まると、すぐに潜水艦に搭載することを決めたのです。東アジアの軍事的緊張はそれほど高いというわけですが、これで海自のディーゼル潜水艦は圧倒的な攻撃力を手にする可能性が出てきました。次世代の『たいげい型』はVLSを搭載できるよう研究が進んでおり、実現すれば敵基地攻撃も可能になります」(同・軍事ジャーナリスト)

 軍備計画は国家予算を圧迫しないよう配慮するだけでなく、陸、海、空のバランスも非常に大切だという。

「究極の“金食い虫”である原潜の建造や運用に多額の国家予算を投入し、陸や空の守りが疎かになっては全くの無意味です。しかも日本が原潜を建造するとなると、ディーゼル潜水艦の建造は永遠に中止する必要が生じます。これまで日本が築き上げてきた“世界一のディーゼル潜水艦”を開発するノウハウが全て消え去ってしまうわけです。これは率直に言って、あまりにももったいないと思います」(同・軍事ジャーナリスト)

韓国も原潜開発に前のめり

 最新型のディーゼル潜水艦が高性能であるにもかかわらず、なぜ自民党と維新は原潜開発を政策合意書に明記したのだろうか。

 背景の一つとして中国の最新型原潜が非常に高性能だということと、韓国も原潜開発に前のめりになっていることを挙げることができる。

 第1回【いま小泉防衛相があえて「原潜」保有の可能性に言及した理由…動力が“ディーゼル”と“原子力”で異なる決定的な要素とは】では、東アジア各国の原潜を巡る動きについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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