日本国民に残された猶予は短い…? 「高市政権」に課された“安倍元首相の宿題”2つの論点

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高市政権がクリアすべき「2つの課題」と具体策

 物価上昇を抑えつつ、経済成長と財政再建を両立させるためには、2つの重要な課題がある。

 第一に、「規制改革の断行」が必要だ。労働力の面では、外国人労働者について、なし崩し的な受け入れや特定国への偏りを排除しつつ、日本社会への高い適応力と就業意欲を持つ人材を積極的に受け入れる制度整備が不可欠である。

 働きたい人が十分に働くことができるよう、「年収の壁」の解消や時間外規制の見直しも避けて通れない。また、生産性向上に向けたデジタル化の推進も待ったなしである。AI・自動運転、データ利活用などの社会実装に向けたルールを整備するほか、書面提出をはじめ行政や産業現場に残るアナログ規制を見直すことも有効である。

 第二に求められるのが「財政規律の回復」である。その実現に有効な施策が、歳出の膨張を防ぎ財政規律を高めるため、国家予算の「単年度主義」を改めて「中期財政計画」を導入し、複数年にわたる歳出総額に天井を設ける仕組みづくりだ。

 これにより、いったん補正予算が膨れあがったとしても、翌年以降に歳出を抑えることが容易となる。OECD加盟国の3分の2が何らかのかたちで「中期財政計画」方式を取り入れており、わが国のような「単年度主義」の国は先進国のなかでは少数派である。

 ばらまきではなく財政の信頼を立て直し、規制改革を着実に進めることが同時にできるかどうかが、これからの日本経済の分岐点となる。いまの株高は高市政権が掲げる「強い経済」への期待を先取りしたものである。市場の期待を「真に強い経済」への実現に変えられるか。高市政権の真価はまさにそこにかかっている。

西岡慎一
大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。1999年日本銀行入行後、国内外の経済調査などに従事。2021年、日本総合研究所に入社し、マクロ経済研究センター所長などを歴任。24年4月より現職。

デイリー新潮編集部

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