名古屋が「アイドルの聖地」に? ボイメン仕掛け人が明かす、東京・大阪にはない「独自の熱狂」

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追い風となった愛・地球博

 追い風となったのが2005年の愛・地球博で、世界からの注目度がさらに上昇、翌年は外務省・国土交通省の後援を受けるイベントとなる。以後もイベントの規模は順調に大きくなり、行政と地元のあついバックアップで世界からコスプレイヤーが訪れるイベントに定着した。コスプレは、名古屋を活性化させる頼もしいコンテンツとして根付いている。

 話をアイドルに戻すと、名古屋におけるアイドルカルチャーの発展も、コスプレの類似系をたどっている。前出の谷口氏がボイメンを創設したのが2010年。すでにSKE48が2年前に発足していたが、東京・大阪のような若手タレント育成の土壌が整っていなかった名古屋に勝機を見出した。

 といっても最初から順風満帆とはいかなかった。テレビ局に営業に行けば相手にされず、ライブの集客は散々。しかしメンバーは一貫して東海地方出身者で固め、少しずつ地元メディアでの仕事が増えていって、「名古屋の街おこしお兄さん」として受け入れられていく。ボイメンの成功以後、同社はガールズグループも手がけるようになったし、もちろん大小の地下アイドルグループも名古屋で活動している。

 コスプレとアイドル、二つのカルチャーが名古屋に定着した一因は、仕掛け人が名古屋に「ブルーオーシャン」を見出したこと、地元の信頼を勝ち得て継続した活動にあるだろう。そして、規模が大きくなってもあえて東京にこだわらず、ひとっ飛びして海外を見据えてしまうことも挙げられる。

 名古屋に拠点を置きつつ、海外展開もやってのけてしまうアイドルとして、グラビアアイドルの沢口愛華がかつて在籍していたガールズグループのdelaがある。2012年の結成当初から「名古屋から世界へ」をコンセプトに、今までベトナム・シンガポール・中国などでライブを開催。名古屋観光文化交流特命大使も務めている。

 地元では気軽に会いに行ける、イベントが体験できるのに、海を越えてファンを呼び込もうとする。この遠近二刀流ともいうべき戦略が、東京に押されずにローカルにビジネスを回していける秘訣でもあるようだ。

 名古屋のアイドル熱について、谷口氏は「東京や大阪とは違う、独特の“地元密着型”の熱さがあります」とも分析する。

「名古屋発のグループは、地元愛や方言といったローカル要素を前面に押し出すことで、全国のファンにも新鮮に映っています。東京発のアイドルが“華やかさ”や“完成度”を武器にするなら、名古屋は“親しみやすさ”や“参加感”を強みにしていると言えるでしょう。この土地ならではの温度感を、『世界アイドル共和国』を通じてもっと広く知ってもらえたらうれしいですね」(谷口氏)

 現場ならでは熱さと、海外からの視線。この2つが、名古屋におけるカワイイカルチャーを盛り上げている。

大宮高史
エンタメでは演劇・ドラマ・アイドル・映画・音楽にまつわるインタビューやコラムを執筆。そのほか、交通・建築など街ネタも専門分野。

デイリー新潮編集部

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