阪神はラッキーだった!? ドラ1「立石正広」は、なぜ予想より競合した球団が少なかったのか?

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スカウトだけで1位指名を決めていたら

 創価大は、8月6日の巨人戦、8月20日の西武戦、そして8月24日のソフトバンク戦に立石をすべて欠場させている。立石がプロの投手にどれだけ通用するのかを確認したいと考えていた各球団の上層部は“肩透かし”を食らった。

 それに加えて、立石は東京新大学野球の秋季リーグ戦でも、各球団の上層部に“不安”を与えた模様だ。10月5日の駿河台大戦で、立石は腰の違和感を訴えて試合途中でベンチに退いている。

 ドラフト1位で指名される選手については、球団のトップや上層部の意向が反映される。例えば、2017年のドラフト会議では、広島の松田元オーナーが、その年の夏の甲子園で大活躍した中村奨成(当時・広陵)を強く推し、1位で指名した。結果、中日と競合した末、地元広島が誇るスター選手の交渉権を得ている。

 松田オーナーが中村を推す様子は、広島の苑田聡彦スカウト統括部長(当時)を追ったNHKのドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀』で放映されている。

 実際、球団のトップや上層部が1位指名で推す選手は、甲子園で華々しい活躍を見せた人気選手である傾向が強い。なぜなら、集客やグッズの売上向上につながりやすく球団経営を潤すからである。

 立石は、前述したように「甲子園のスター」ではなく、東京六大学野球や東都大学野球のような主要な大学リーグで活躍したわけでもない。球団のトップや上層部にとっては“響きにくい選手”だった。

 11月2日。立石は、ドラフト会議後に行われた最初の公式戦である千葉経済大戦(横浜市長杯争奪関東大学野球選手権)で、横浜スタジアムの右中間にホームランを放った。そのプレーを見ていたスカウトは、“意味深な言葉”を呟いた。

「スカウトだけで1位で指名したい選手を決めていたら、もっと立石を指名した球団は多かったと思いますね……」

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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