「来季もスタンフォード大でプレー」表明も…「佐々木麟太郎」を指名したソフトバンクに勝算はあるか 「2012年の後悔を繰り返したくない」との指摘も

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ソフトバンクには勝機がある?

 通常、上位30傑に入っていない大学生であれば、メジャーリーグ・ドラフトでの1、2巡目での指名は考えにくい。これに高校生のランキング表も加わってくるので、100傑までに入っている大学生は3~5巡目の指名にまわるのが一般的だ。

 こうした佐々木の現状での評価と指名順位が、「ソフトバンク優勢」につながっていく。佐々木は来年2月からのNCAA一部リーグ戦に出場する。2季目の飛躍にも期待したいが、上位30傑までランキングを上昇させるのは難しいだろう。“89位”から少しランキングを上げたとしても、指名順位が3~5位なのは変わらない。そうなれば、ソフトバンクに勝機が出てくる。

 昨年のメジャーリーグ・ドラフト会議で全体1位指名された高校生内野手のイーライ・ウィリッツ(17歳=当時)の契約金は820万ドル(約12億5000万円)。レッズから1位指名された投手のチェイス・バーンズ(22)、ロッキーズ1位の外野手、チャーリー・コンドン(21)は925万ドル(約14億1000万円)の契約金が提示された。

 24年1位指名選手の契約金平均額は504万ドル(約7億6800万円)で、2巡目での指名も200万ドル台(約3億400万円)を提示された。しかし、3巡目からはガクンと下がり、100万ドル(約1億5240万円)を切るケースも少なくない。ドラフト指名選手の契約金そのものは上昇傾向にあるが、それはあくまでも1位選手の高騰化によるものだ。

 つまり、3巡目以降での指名となる佐々木の契約金は70万ドルから100万ドルとなり、NPBが新人選手への上限金として定めている「契約金1億円プラス出来高5000万円」よりも少ないか、ほぼ同額となる。ソフトバンクは佐々木を指名したメジャーリーグ球団と対等か、それ以上の条件提示ができるのだ。

「メジャーリーグからの指名を選択すれば、マイナーリーグからスタートとします。他の選手たちと共同でアパートを借り、わずかなミールマネー(食糧費)をもらい、サバイバルレースに身を投じます」(前出・現地記者)

 一方、ソフトバンクのファーム施設は日本一とされ、食事の面も含め、寮生活も快適だ。どちらが野球に専念できる環境であるかは言うまでもないだろう。

 NCAAの来季リーグ戦は2月から5月まで。メジャーリーグのドラフト会議はオールスターゲーム直前に行われるので、26年7月12日が有力視されている。12日開催なら、その入団交渉の期限は同28日までとなる。NPBの留学中の指名選手に対する期限は26年7月末までだ。このメジャーリーグの交渉期間が短すぎる理由も興味深く、今回のソフトバンクの指名にも影響したようだ。

「日本では指名対象選手との事前交渉は認めていないそうですが、米国ではOKなんです。すでに代理人と契約している学生も多く、就職活動の一環と見なされています。NCAAもプロ球団側から求められれば、入団の意思や学業成績などの情報も提供しています。それは他のスポーツも同様です。契約金を含めた事前のやり取りもされているので、交渉は短期間でも大丈夫なんです」(前出・米国人ライター)

 昨年4月、巨人、埼玉西武など複数のNPB球団が現地入りし、佐々木を直接視察している。日本とは正反対に大学リーグ組織が情報提供する環境から察するに、ソフトバンクも「説得できる何か」を掴んだのではないだろうか。NCAAがオープンであるため、来年5月のリーグ戦終了を待たなくてもソフトバンクの交渉は可能だ。

「12年の後悔」

「2012年、大谷翔平(31)はメジャーリーグに行きたいからNPB球団は指名しないでくれと表明しました。北海道日本ハムが強行指名し、誠心誠意を持って説得したら、事態は一変し、大谷は日本ハムに入団しました。当時、他の11球団は強く後悔しました。今回も“12年の後悔は繰り返さない”と考えていたことは確かで、DeNAも1位指名したのはその表れだと思います」(在京球団スタッフ)

 佐々木と代理人契約を結んだWMEスポーツはソフトバンクの指名について、何も表明していない。佐々木自身はもちろんだが、花巻東高校の監督でもある父・佐々木洋氏(50)も「大学卒業」に強くこだわっているという。

 近年、メジャーリーグでは引退後の大学復学や、オフシーズンに講義を受講させて卒業させるなど、選手の将来を考えた学業面でのサポートにも力を入れており、それを指名後の入団交渉で話し合うケースも増えてきた。

 それはNPBも同様で、選手会では引退した選手の社会人枠での大学進学を応援しており、ソフトバンクも学業面でのサポートを約束することも十分、考えられる。

「憧れは長嶋茂雄さん」と語ってきた佐々木が、長嶋氏の永遠のライバルで盟友だった王貞治ソフトバンク球団会長(85)に指導される――そんなロマンに溢れた光景を見せてくれるかもしれない。

デイリー新潮編集部

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