予約キャンセルは10%以上、「待たされた時間を弁償しろ!」と怒鳴る患者も…コンビニより軒数が多い「歯医者さん」の生き残り合戦
キャンセル率10%
こうした患者の問題行動のなかで、歯科医院が非常に困るのが「予約キャンセル」だという。
歯科医によると、実は歯科医院における患者のキャンセル率は10~15%とかなり高く、連絡が一切ない「無断キャンセル」も5~10%ほどあるのだそうだ。
キャンセルする理由は、純粋に予約していたことを忘れている場合だけでなく、患者自体が治療の必要性を感じなくなったり、痛い治療が嫌で行くのがおっくうになったりなど様々だ。
「今はほぼ予約制。ドタキャンされると当然その時間、何もできなくなる。次の患者さんを早めにご案内しようにも、ご本人はまだいらっしゃっていないわけですから。ドタキャンされた患者さんにお電話すると、『いちいち電話してくるな』『仕事の時間ってことぐらい分かるだろ』と逆ギレされることも少なくありません」
だからといって、こうしたドタキャンを放置してしまうと、患者は罪悪感で二度と足を運ばなくなってしまう。
「本当ならば『ドタキャンなんて大人がすることか』という嫌味の一つくらいぶつけたいところですが、受付の担当には我慢して優しく『どうされました?』と聞くようにと言ってあります」
小児歯科の大変さ
患者の機嫌を取るのが特に難しいのが「子ども」だ。彼らに大人しく診察を受けてもらうのは至難の業である。当然だ。子どもにとって、あの音、臭いのする空間が居心地いいはずがない。
筆者自身、幼いころに通っていた歯科医院の記憶がかなりのトラウマになっている。
通っていた歯科医院は、なぜか次に診療する子どもをその診察台の前にスタンバイさせるところだった。つまり、前の子が治療されている様子が一部始終目に入るのだ。その時、目に入ったのは、拘束具で子どもが縛られている光景だった。
まだ十分な資器材のない時代だったからかもしれないが、“痛い麻酔注射のための麻酔”もなく、抜歯の日は朝から憂鬱だった記憶がある。
今思えば、恐らくあの歯医者は当時においてもいい歯医者ではなかったと思うが、子どもが親に「痛かった」といくら訴えても、大人は「歯医者はそういうもの」という固定観念から、子どもの訴えを受け流してしまいがちになる。
一方、普段からパニックになり泣き叫ぶ子どもの患者を診る歯科医師は、口調が実に穏やかだった。ある小児歯科医はこう話す。
「子どもは我慢ができず本能で動いてしまいますからね。泣いたり口を開けなかったりする子どもにも辛抱強く対応していますよ」
最近の小児歯科においては、とにかく「無理をしない・させない」ことを大切にしているという。
「昔は確かに押さえつけなどが横行していましたが、最近はほとんどなくなったんじゃないかな。体を押さえつけたところで口は動きます。それで恐怖心だけ植え付けても、その子が今後歯医者に来たがらなくなってしまうと逆効果ですからね」
暴れる子に対しては、親に抱きかかえてもらっての治療をするところもあるが、同氏はそれを勧めていない。
「親御さんに抱きかかえてもらったり、側で見守られたりしているとどうしても甘えてしまい、泣き止まなくなったりします。また、子どもと歯科医師との意思疎通が難しくなり、やはりいつまで経っても歯医者に対する苦手意識が消えなくなってしまいますから」
では、子どもを少しでもスムーズに通院させるにはどうすればいいのか。
「なるべく午前中にいらっしゃるといいかもしれません。子どもは昼食を摂った後、または体を動かした後は疲れて眠くなります。そうすると自然と機嫌が悪くなる。朝エネルギーがあるうちにいらっしゃっていただいた方が割とすんなり受けてもらえると思います」
よく、親が子どもに対し、脅し文句で「しっかり歯を磨かないとまた歯医者さんに痛いことしに行かないといけなくなるよ」などと言ってしまうことがあるが、それもよくないという。
「“歯医者は怖いところ、痛いところ”という固定観念を受け付けてしまえば、そりゃ歯医者には来たがりません。歯は一生ものですから、子どものころから身近な存在として感じてもらえるといいなと思います」
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