下剋上へ“怒涛の3連勝”も大反撃を食らう…CS&プレーオフ最終戦までもつれた「大激戦集」

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本当にきついシーズン

 高卒2年目の大谷翔平が投打にわたって見せ場をつくったのが、2014年の日本ハム対ソフトバンクである。

 10月14日、延長10回の末、オリックスを2対1で下し、ファイナルステージに駒を進めた日本ハムは、翌15日の対ソフトバンク第1戦でも0対1の7回に4番・中田翔のソロで追いつく粘りを見せる。さらに5番・大谷も左前安打を二塁打にする好走塁を見せ、三塁に進塁後、遊ゴロの間に勝ち越しのホームを踏んだ。

 だが、ソフトバンクも9回に1死二、三塁と反撃し、吉村裕基の中越え二塁打で3対2と逆転サヨナラ勝ち。シーズン1位の意地を見せた。

 日本ハムは第2、3戦と、中田のファーストステージから4試合連続の本塁打などで連勝するが、ソフトバンクも第4戦で柳田悠岐の先頭打者本塁打など、3回まで毎回の4得点を挙げる理想どおりの戦いぶりで、日本シリーズに王手をかけた。

 そして、10月19日の第5戦、崖っぷちの日本ハムは、大谷の右腕にすべてを託した。

 直球の威力を欠き、2回に4点を失った大谷だったが、3回以降は変化球主体に切り替え、6回まで追加点を許さない。この力投に味方打線が応え、7回には大野奨太、西川遥輝の連続長打で、一気に1点差に追い上げた。

 その裏、大谷も3者凡退に切って取り、7回12奪三振を記録して降板すると、8回に中田が同点ソロを放ち、試合は延長戦へ。勢いに乗る日本ハムは11回2死満塁、中島卓也の2点タイムリーで勝ち越し、最終決戦へともつれ込んだ。

 だが、第6戦、勝利の女神はソフトバンクに微笑む。先発・大隣憲司が7回無失点、打線も細川亨の本塁打など効率的に得点を重ね、4対1で3年ぶりの日本シリーズ切符を手にした。

 シーズンも最後の144試合目でV決定、CSも6戦を要した秋山幸二監督は「本当にきついシーズンだと思う」と激闘に次ぐ激闘を振り返った。

手に汗握る熱戦を

 勝利の女神がどちらに微笑むか最後の最後までわからなかったのが、2005年のパ・リーグプレーオフ第2ステージ、ロッテ対ソフトバンクである。

 シーズン2位のロッテが第1、2戦と連勝して王手をかけ、第3戦も9回表を終わって、4対0とリード。この時点では誰もが、ロッテの勝利を確信していた。

 ところが9回裏、ポストシーズンで4試合連続セーブ中の守護神・小林雅英が4安打を許し、自らの悪送球、押し出し四球により、4対4の同点に。土壇場で息を吹き返したソフトバンクは延長10回、川崎宗則のサヨナラ打でようやく一矢を報いた。

 勢いに乗ったソフトバンクは、第4戦もズレータの効果的な2発で連勝し、10月17日の最終決戦も7回まで2対1とリード。このまま逃げ切るかと思われた。

 だが、ロッテは8回、すでに引退を決めている代打・初芝清の幸運な内野安打で突破口を開き、1死一、二塁から里崎智也の左越え2点タイムリー二塁打で鮮やかに逆転。これまで1度も優勝経験のなかった初芝は「野球の神様が最後の最後で17年間頑張ったご褒美をくれたとしか思えませんでした」と回想している。

 そして、9回裏、2日前に救援失敗した小林雅が「不安はなかった」というバレンタイン監督の絶大な信頼に応え、1点差を守り切って、31年ぶり日本シリーズ進出を決めた。

 今年も最終決戦までもつれる展開が見られるか、手に汗握る熱戦を期待したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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