米国民40%が「貯蓄なし」の窮状、「トランプ不況」「失政」にMAGA派も落胆…そして世界は“資本主義の転換点”を迎える

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米国で存在感を増す「社会主義」

 あまりの失政ぶりを見るにつけ、トランプ氏の経済政策に期待していたMAGA派(トランプ氏の強力な支持母体)からも落胆の声が出ているほどだ。

 トランプ不況はたしかに心配だが、米国の資本主義システム自体に変化が生じつつあることにも注目すべきだと筆者は考えている。

 国家資本主義の傾向が強まっているとの指摘が相次ぐ中、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2日、トランプ氏が実践する資本主義とニューヨーク市長選の民主党候補マムダニ氏が唱える社会主義の境界線がぼやけてきていると報じた。価格を引き上げる民間企業に対し、両氏は強制手段を講じることを好む傾向があることがその根拠だ。

 イェール大学が9月に公表した調査結果によれば、米大学生の46%が資本主義よりも社会主義の方が望ましいと回答している。

 思い起こせば、冷戦下の西側諸国は共産圏諸国に対抗する必要から、福祉制度を重視する修正資本主義を採用した。米国で社会主義が台頭することを阻止するため、トランプ氏は市場への介入をさらに強めるのではないだろうか。

資本主義が迎えつつある大きな転換点

 トランプ氏の政策が国際経済に与える影響が甚大であることも忘れてはならない。

 世界貿易機関(WTO)は7日、来年はトランプ関税の影響が顕在化し、世界貿易の伸びは0.5%にとどまり、今年(2.4%増)から大きく減速するとの見通しを示した。

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事も5日、トランプ関税は従来の国際貿易体制を書き換えつつあるとの認識を示した。

 冷戦終結後に進んだグローバル化のせいで主要先進国の中間層は痛手を被っており、反グローバル化の流れを止めることは困難な情勢だ。

 これまでのリーダーと異なり、自身への批判を意に介さないトランプ氏が「市場への介入と関税引き上げ」というタブーに切り込んだことで、資本主義は大きな転換点を迎えつつある。だが、経済システムの移行期に混乱が伴うのは過去の歴史が教えるところだ。

 米国をはじめとする国際経済の今後の動向について、最大の関心をもって注視すべきだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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