大卒初任給30万円どころか「中高生を“超青田買い”」も…実力主義の一流企業が“優秀な高校生”を囲い込みたいと考える当然の理由

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 東京都は「TOKYO中高生職業体験サイトJob EX」を開設し、中高生と企業・団体を繋ぐイベントを今夏、行った。当日のイベントの様子を、日経電子版は「中高生 『超青田買い』の動き 職業体験、都が企業と仲介 みずほFG・LINEヤフー…大手も多数参加」のタイトルで紹介した。

 参加した有名企業・団体の一部はアクセンチュア、NTT、熊谷組、警視庁、SOMPOケア、サイバーエージェント、東急バス、東京ガス、日本生命、ファイザー、ベネッセコーポレーション、リクルート、みずほFG、LINEヤフー。

 企業が優秀な大学生を一般的な内定日よりも早く内定を出すことを元々「青田買い」と呼んだが、その対象を中高生にまでして「超青田買い」と日経は表現したのである。さすがに中学生は早すぎだろうが、優秀な高校生が大学や短大や専門学校へ行くことなく、こうした大手に正社員ホワイトカラーとして入る時代が迫っているのかもしれない。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】

変容する大学教育の意味

 大学に行くインセンティブは元々、「大卒、しかも名門であればあるほど『いい会社』に入れ、一生安泰。或いは、『社格』の高い会社にまずは入り、そこからより良い条件の会社を見つけても転職しやすい」というところにあった。だからこそ我が子の将来を憂う親はエスカレーター式の名門私立幼稚園や小学校に入れ、SAPIXや東進ハイスクールに通わせた。エスカレーター式ではないもののその後名門私立中高に入り、東大を筆頭とした旧帝大や早慶を目指させるのである。

 しかし、2024年の出生数は68万人台。第二次ベビーブーム世代の中でもっとも多かった1973年生まれが209万人だったことを考えると、今や明らかに大学の数は多過ぎるし、名門大学を卒業したからといって、それだけで待遇の良い大企業に入れるような時代ではなくなるだろう。何しろかつての「受験勉強ができた人間は優秀に違いない」という神話が通用しないのだから。

 もちろん「地頭」の重要性を説くのは分かる。名門大学への進学率が高い開成、女子学院、雙葉、ラ・サール、洛星、武蔵、修猷館、灘といった高校に通う生徒は地頭がいいとすでに採用側は分かっており、出身大学よりもむしろ出身高校を見るべきでは? といった声さえ出ているわけだ。

 各都道府県No.1の公立に行く生徒も地頭はいい。だったらこうした学校に通う高校生を囲い込んでしまえ! 若い方がより良い! との発想になるのは不思議ではない。

 というのも、元々日本の大学は「入るのは大変だが出るのは簡単。これはアメリカとは逆」と言われ続けてきた。だから、高校までは天才だった生徒が大学で遊び惚けてアホになってしまう、ということもあったのである。

 今回このイベントに参加した企業は、アクセンチュアとリクルートが筆頭ではあるが、完全に実力主義の企業が多い。そんな企業が日経が言うところの「超青田買い」をしたということは、大学教育の意味が変容した、と考える風潮になっているのかもしれない。

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