「やなせたかし」さん、死去3カ月前に周囲を驚かせた“余命発言” 当時明かしていた真意と入念な“死に支度”
墓石を注文して、位牌も用意
とはいえ、やなせ氏の息災を願う子供たちのためにも、ここはご本人に登場を願うしかあるまい。
「いや、あれは冗談だよ。“2、3週間”というのは全くのジョークです。医者から余命を告げられたこともありません」
月に一度、順天堂大学病院で定期健診を受けてはいるが、目立った異常はないという。それを聞いてまずはひと安心、のはずが、
「確かにこの頃、『自分の人生が終わりそうになっているなぁ』と思うことは増えたね。耳も目も不自由になってきたし、何よりオレも94歳だろ。いつまで生きられるかは分からない」
さらに、告白はこれで終わらなかった。
「実はもう“死に支度”を始めているんです。墓石も注文したし、位牌も用意して仏壇に置いてある。田舎(高知県)のお寺に頼んで『清浄院殿画誉道嵩大居士』という戒名までつけてもらったんだ。な、準備万端だろ」
オレは見届けられないね
「アンパンマン」の絵本が初めて世に出た1973年当時、やなせ氏は54歳。アニメ化された1988年には69歳を迎えていた。その“晩年”は、正にアンパンマンの快進撃と共にあった。
先月、発表された「子供の好きなキャラクターランキング」(バンダイ調べ)でも、アンパンマンはポケモンやドラえもんを抑えて12年連続の首位。子供たちから変わらぬ支持を集めている。
「アニメが25年も続くとは全く考えてなかったな。最初はテレビ局も期待してなかったし、オレも『1年続けばいいかな』と思ってたくらい。最近は外国にも人気が広まって、今後がとても楽しみなんだけど、オレは見届けられないね」
作者の“死に支度”の一方で、アンパンマンは海を越えて行くのだ。
(「週刊新潮」2013年7月18号「余命2~3週間は冗談でもアンパンマン『やなせたかし』死に支度」より)
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今もなお大人気のキャラクター
その後、体調を崩したやなせさんは8月に入院。余命発言の3カ月と少し後、10月13日に死去した。
一方、アンパンマンの人気は現在まで衰えず、アニメ「それいけ!アンパンマン」(日本テレビ系)は現在も放送中だ。玩具や映像ソフト、食品、飲料といった関連グッズもいまや育児の必須アイテム。まさにアンパンマンは今も「みんなの夢」を守り続けている。
そうしたアンパンマンの活躍を「見届けられない」と吐露したやなせさんだったが、自身と愛する妻が朝ドラのモデルになるとは、思いもよらなかったことだろう。天国でどのような感想を抱いているのだろうか。





