米国30歳以下の2割が「政治的暴力は正当化できる」 1年で資産が“2倍増”の「トランプ・ファミリー」にZ世代が怒りを向ける日
国家は巨大なファミリービジネス
トランプ氏の統治スタイルは「家産制」だという指摘がある。
家産制とは、父である家族の支配を意味する家父長制を国全体に拡張したシステムのことだ。近代国家の成立により葬り去られたとみなされていたが、トランプ氏の復権により、米国で家産制が復活しつつあるという認識だ。米軍を私兵化することに成功すれば、トランプ氏の家産制が完成に近づくことは間違いないだろう。
家産制の下で国家は巨大なファミリービジネスとなるのが常だ。政治リーダーは身内をえこひいきし、私欲を肥やすことができるからだ。
トランプ氏の純資産は昨年の大統領選挙を戦っているときの43億ドル(約6300億円)から9月時点で73億ドル(約1兆1000億円)に急拡大した。
打ち出の小槌は暗号資産だ。トランプ氏は3人の息子と手を組み、2024年9月にWLFIと名付けた暗号資産ベンチャーを立ち上げた。そして、大統領復帰後に暗号資産業界に有利な法整備を行ったことで、WLFIの売り上げは推定14億ドル(約2100億円)に急増したのだ。「大統領の権力を現金化した」と揶揄する声が出ているほどだ。
トランプ氏の孫娘が、ホワイトハウスを背景に自身のアパレルブランドを宣伝したことも物議を醸している。公的空間を私的な利益に利用したという批判だ。
トランプ氏の政策が雇用市場の足かせに
トランプ・ファミリーの繁栄ぶりとは裏腹に、米国の雇用情勢は悪化する一方だ。
米調査企業チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは10月2日、米企業や政府機関による今年1~9月の新規採用数は前年比6割減の20万4939人と発表した。リーマンショック直後の2009年以来の最低水準だ。
トランプ氏の政策が雇用市場の足かせになりつつある。
トランプ政権への悪評のせいで米国のインバウンドは絶不調だ。ラスベガスでも観光客の減少が止まらず、雇用の受け皿は縮小する一方だ。
トランプ政権は人工知能(AI)業界への支援に熱心だが、職場でのAI導入が災いして大卒レベルのホワイトカラー職は大打撃を被っている。
10月からの政府機関の閉鎖で、若年層を巡る雇用環境が一層悪化することも確実だ。
彼らの銃弾はどこへ向かうのか
気がかりなのは、米国人の政治制度への不信感が急速に高まっていることだ。ニューヨークタイムズが10月3日に公表した世論調査結果によれば、41%が「米国は民主主義国家だとは思わない」と回答した。
中でも深刻なのはZ世代(18~29歳)だ。米国にも拠点を置く英国の調査会社YouGovが9月中旬に公表した調査結果では、「政治的暴力は正当化できる」と回答したZ世代は20%と、他の世代を大きく上回った(保守派活動家のカーク氏を暗殺したのもZ世代だった)。
政治信条が異なり、自身の将来の可能を奪おうとするトランプ氏はZ世代にとって不倶戴天の仇敵だ。だが、トランプ氏の警護が厳しいため、彼らの銃弾はトランプ氏と一蓮托生である一族に向けられるのではないかとの不安が頭をよぎる。
混迷を深める超大国の行く末が心配でならない。
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