定年退職したら何も残らなかった…70歳を過ぎても楽しく働くひとの“3つの共通点”

国内 社会

  • ブックマーク

動くパワースポット

 まぁ、記事を書くなどPRできるところはできたが、今後この試みが広がれば、私は何らかの報酬を得て唐津市と田中さんとともに何かができるかもしれない。何しろ彼らは自治体の悩みの種である「街づくり」に精通し、予算を獲得できるからである。そこで自分の能力と人脈を活かせれば素晴らしいことである。彼からは時々興奮ぎみの電話が来る。「記念の一万円札が盗難に遭うから、と唐津市役所の金庫に入れられてしまった! 展示してこそのものなのに!」と憤慨していたかと思えば「唐津市役所のロビーで展示されるようになりました! 良かったです!」。そして「中川さん、なんか書いてよ」と言ってくる。その興奮した感じと笑顔にいつも私はやられてしまい「ちょっと頑張ってみます」と言う。

 果たして自分は20年後、このようになれているかどうか、という点については今から準備しておかねばならない。言葉は悪いがそうした人に「取り入る」こと、さらにはその人から「学ぶこと」が、自身の70歳以降の仕事人生に繋がるもの。

 農地耕作やら、台風での復旧作業に関して、その農家さんの所に人が勝手に集まってくるのが佐賀県伊万里市の農家・吉田金吾さん(79)である。一応「金吾さんのこと書くからねー」と電話をしたら、「アンタ、いい話はつまらん。ワシのことはボロクソに書け! その方が面白い」と言われたので、同氏がいかに無茶苦茶な男でありつつも、人々から慕われているかについて、現実の同氏を書く。

 初めて会ったのは、私が唐津市に移住した2020年11月の翌月、12月である。ひょんなことから知り合ったアウトドア事業を手掛ける男性から紹介され、電動マウンテンバイクで伊万里まで行き、「動くパワースポット」と呼ばれる同氏に会ったが、笑顔のかわいいおじいちゃんだった。

 農家に行くと何やら怪しい骨組みに泥で壁が少しできている。「ここで何を作るんですか?」と聞いたら「サウナを作る」と言う。そして「この骨組みに泥をアンタも付けてくれんかの?」と言い、泥を重ねる作業をした。「憎たらしいヤツの顔を思い浮かべてコノヤロー! とバンバン泥を投げんね」と言われ、皆で「コノヤロー!」と言いながら壁を積み上げて行く作業をした。

次ページ:「感じがいい」「人付き合いがいい」「笑顔がいい」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。