豊昇龍に見えた「このままでは終われない」意識…大関取り出直し「若隆景」はモチベ維持が課題、安青錦は昇進チャンスか【音羽山親方の秋場所総括】

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安青錦は昇進のチャンス!

――一方、新三役(小結)の安青錦関は、今場所も11勝を上げて技能賞を受賞しました。入門以来、負け越しが1度もなく、入幕してからも4場所連続11勝と、壁らしい壁がないまま、来場所は関脇に昇進しそうです。

音羽山:彼は稽古熱心だし、昔の力士のビデオを見て、相当研究もしているようです。入門してまだ2年とはいうものの、10代の時、世界ジュニア相撲選手権に出ているし、並行してレスリングの大会でも活躍している。つまり、そうした格闘技の経験が今の成績に結びついているんです。

 一見、壁はないように見えますが、彼にも弱点がある。前傾姿勢で相撲を取っている時はいいのですが、千秋楽、若元春に胸を合わせられ寄られた時は、何もできずに敗れている。他にも大の里、王鵬、正代と敗れた相手は、すべて大きな相撲を取る相手です。

 審判部は、「大関昇進は秋場所の11勝が基点」と見解を述べているようですが、名古屋場所は前頭筆頭で11勝なのだから、来場所、優勝争いに絡んで12勝とか上げたなら、大関に昇進させてもいいのでは? ……と個人的には思います。今、大関が琴櫻1人ですから、昇進のチャンスですよ!

霧島は体のケアに目を向けるべき

――関脇・霧島関は6勝9敗と振るいませんでした。

音羽山:じつは腕を負傷していて、稽古がほとんどできなかったんです。(霧島が)手を使えないことがわかると、みんなそこを攻めてきますからね。霧島は大関に上がってから、ケガが多い。20代前半とかじゃないんだから(現在29歳)、これからは体のケアに目を向けるべきです。霧島も出直しです。

新十両・朝白龍は特に上半身がいい

――秋場所は、高砂部屋から新十両2人(朝白龍、朝翠龍)、再十両1人(朝乃山)と3人の十両力士が生まれました。その中で、新十両の朝白龍関が優勝を果たしましたね!

音羽山:彼は豊昇龍と一緒の飛行機でモンゴルから来日して、日体大柏高で相撲を始めました。豊昇龍は高校を卒業後、立浪部屋に入門しましたが、朝白龍は拓大で相撲を続けてから入門しました。もともと力も強くて、もっと早く十両に上がってもよかったくらいです。最近は、体もだいぶ大きくなって、特に上半身がいい。あとは、もう少し足を鍛えたら、すぐに幕内で活躍できると思います。

――同じく新十両で、史上14組目の「親子関取」と話題になった、西ノ龍関はいかがですか?

音羽山:埼玉栄高から入門して7年ですか? 十両でどんな相撲を取るのかなぁと注目して見てましたが、動きもいいし、勝ち越しました。課題は体をもっと大きくすることでしょうね。

以前は多かった「大相撲海外公演」

――さて、10月15日からは、久しぶりの海外公演「大相撲ロンドン公演」がありますね。
現役時代、親方も何度か海外公演に行かれたと思いますが……。

音羽山:2007年にハワイ、08年にロサンゼルスとモンゴル、あとは13年にジャカルタと、私が現役の頃は、けっこう海外公演が多かったんですよ。

 ただ、その後、海外の治安が問題になったり、コロナ禍だったりで、今回が12年ぶりの海外公演ということになりますね。ロスでは、ドジャースタジアムに行って、白鵬横綱が始球式をして、野球観戦を楽しみました。当時のドジャース、カブスの選手と交流もしました。

 ロンドンは30数年ぶりらしいですけど、力士たちには、ぜひ大相撲の伝統、楽しさを伝えてきてもらいたいですね!

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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