「教団と大統領夫人のパイプ役だった」 旧統一教会・韓鶴子逮捕で浮かび上がった“占い師”の存在
大統領選で組織票動員
登場する人物のキャラクターが濃すぎて韓流ドラマを見ているようである。目下、韓国で起きている贈収賄事件だ。
【写真を見る】いかにも怪しげな“占い師” 大統領夫人と旧統一教会をつないでいたという
9月23日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁(82)が逮捕された。側近に指示して尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の側近の権性東(クォンソンドン)国会議員に不正な政治資金を供与したり、前大統領の妻・金建希(キムゴンヒ)夫人に賄賂としてバッグや宝石などの金品を贈ったなどという容疑だ。
旧統一教会問題を長年取材してきたジャーナリストの鈴木エイト氏が言う。
「今回の摘発は李在明(イジェミョン)政権が政敵の尹前大統領をターゲットにしたものといわれています。ですから、最初から統一教会がターゲットだったわけではない。特別検察官が前大統領の捜査を始めたところ、思っていた以上に教団と癒着していたことが明るみに出たのです」
その内容はというと、まさに汚職のデパート。統一教会は総裁の側近「世界本部長」と「総裁秘書室長」が政界工作を担っていたが、2022年1月、教団の方針を政策に反映するよう権議員に働きかけ、その見返りに政治資金を提供し、また大統領選での組織票動員を約束したという。この結果、11万~12万人の信者が、保守政党「国民の力」に入党したといわれ、そのおかげもあって尹前大統領は1ポイントに満たない得票差で辛勝した。
さらに同年7月、日本で安倍晋三元首相が暗殺されると、韓国でも統一教会がやり玉に挙げられる。危機感を抱いた教団は政権との関係をより密にする目的で、金夫人に接近。シャネルのバッグやダイヤモンドのネックレスなどを贈ったという。
他にも教団のカンボジア事業に政府のODA資金を出すよう仕向けたり、テレビ局を傘下に収めるための便宜を図ってもらうよう働きかけるなど、複数の疑惑が持ち上がっているのだ。
「教団とのパイプ役を担うように」
さらに事件を複雑にしているのは、一連の贈収賄の窓口として、ある「占い師」が介在していることだ。名前はチョン・ソンベ。別名「建進法師」である。
「コリア・レポート」編集長の辺真一氏によると、
「チョンは金夫人が10年以上、頼りにしている人物で、14年ごろに彼女の会社『コバナコンテンツ』の顧問になっています。その後、大統領選の選対本部に入り込み、広報担当者に就任する。権議員とはここで親しくなったといわれています。チョンは統一教会とも付き合いがあったため、そこから教団とのパイプ役を担うようになったようです。故・朴正煕(パクチョンヒ)大統領もそうでしたが、占い師が要人に食い込むのは韓国社会の伝統といえます」
韓総裁が逮捕されたことでドラマのような贈収賄事件は、いよいよ“本編”に入る。






