WBCネトフリ独占放送に危機感を募らせる「電通」 WBC運営が「日本のテレビ業界」にそっぽを向いた理由とは

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 8月26日、米動画配信大手「ネットフリックス」が日本国内でのWBCの独占放送権を得た、と発表したことに衝撃が広がった。これまで東京プールの運営を担ってきた読売新聞社は袖にされた悔しさを滲ませるが、実はもう1社、危機感を募らせる企業がある。これまで日本のスポーツビジネスを扱ってきた広告代理店の“ガリバー”、電通である。

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※本稿は「週刊新潮」2025年10月2日号掲載【赤字754億円、海外従業員3400人削減 ガリバー「電通」の失敗と変貌】の一部を抜粋/編集したものです。

WBCIから袖にされた読売新聞

 2023年WBCの最終試合、大谷翔平がマイク・トラウトから三振を奪い咆哮すると、優勝を決めた侍ジャパンがマウンドに駆け寄り喜びを爆発させる――14年ぶりに日本が王座奪還を果たしたこのシーンの瞬間最高視聴率は46%(世帯)に達し、中継したテレビ朝日によれば国民の約半数にあたる5463万人超が目にしたという。

 しかし次回のWBCが来年に迫るなか世間の最大の関心事となっているのは、サムライたちがどんなドラマをつくるのかではなく、その“視聴方法”なのだ。

「8月26日、米動画配信大手『ネットフリックス』が日本国内でのWBCの独占放送権を得たと発表したのです。WBCは第1回から主にTBSとテレ朝が中継してきましたが、次回は地上波で中継できなくなる見込みです。ネトフリは広告付きなら月額890円で契約できるとはいえ、SNSには“ネットに疎い高齢者はどうなる” “国民的なイベントでなくなる”と戸惑う声が溢れました」(スポーツ紙記者)

 この状況に悔しさを滲ませたのが、これまでWBC東京プールの運営を担ってきた読売新聞社だ。

「民放などがWBCの試合を中継する際、その放送権は主催者のWBCIから読売を通じて、各局に付与されてきました。読売のリリースによればそれが今回、WBCIから直接ネトフリに付与されたといいます」(同)

 WBCIは放送権料の他にスポンサー収入も受け取っており、その大半は日本企業からの収益だとされる。

 にも拘わらず、

「これまでWBCIは大会収益の66%を独占してきました。こうした苦しい条件を呑んで大会を支えてきた読売を、WBCIは袖にしたのです」(同)

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