茂木氏はスーパー「アキダイ」に出現! プロパガンダ飛び交う「自民党総裁選」には「マユツバ思考」で対抗せよ

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茂木氏、スーパー「アキダイ」に出現

 石破茂氏の次の自民党総裁を決める総裁選が正式にスタートした。この数週間、各候補者の動向を大手メディア、特にテレビは候補者たちの思惑通りに垂れ流しにしていた、と言っても良いだろう。

 たとえば茂木敏充氏がスーパー「アキダイ」に出向く。お馴染みの秋葉弘道社長から話を聞く。野菜を買う。その様子の映像が「候補者の茂木氏がスーパーに行き、物価について話をしたのち、自ら買い物をしました」というナレーションと共に電波に乗る。

 他の候補も同様だ。ある候補者は漁港に、別の候補は米屋に、また別の候補は農村に、とあちこち顔を出す。あるいは有力者のもとを訪ねる。支援を依頼しに同僚議員の部屋を訪問し、握手する。それらがそのまま新聞やテレビで紹介される。

「次の総理大臣候補の一挙手一投足は公的な関心である」というのが、大手メディア側の理屈だろう。

 しかし、これらは完全に各候補者や自民党の「プロパガンダ」の垂れ流しになっている点を忘れてはならない、と指摘するのは『プロパガンダの見抜き方』の著者、フリージャーナリストの烏賀陽弘道氏である。プロパガンダの危険性についてあまりにも無自覚なメディアには大いに問題がある、と烏賀陽氏は言う。

「プロパガンダとは、発信者が多数の受信者に向けて、明確な意図・目的を持って発信する情報を指します。当然その情報は発信者にとって都合の良いものであり、本来の意図や目的は表面から隠されていることが多い。

 この意図や目的を知らないままに情報を受け取り、処理すると、自覚しないうちに、発信者の思うように思考や行動を誘導される可能性があります。

 候補者たちが、自身のSNSでプロパガンダを発信するのは当然でしょう。自分のマイナス面をアピールする必要はない。

 しかし本来、メディア側は『これはプロパガンダなのだ』という前提で、その情報を精査して、問題点やおかしな点とセットで伝える役割が求められる。けれども、各候補の番記者たちにそうした検証の意識はありません。だから結果的にプロパガンダの垂れ流しになるのです」(烏賀陽氏・以下同)

フレーミングが多用されている

 烏賀陽氏は同書の中で、さまざまなプロパガンダのテクニック(定石)を明らかにしている。今回のようにテレビが積極的に映像を流している状況で注意すべき点としては、「フレーミング」というテクニックだという。

「発信者側、今回のケースで言えば自民党や総裁選候補者側に有利なように、現実の一部だけを額縁に入れるように切り取って見せることを“額縁化”または“フレーミング”と呼びます。
 
 最近、メディア側の恣意的な“切り取り”については批判が集まりやすいのですが、意外と映像や写真のそれについては気づかない方が多いようです。

 政治家や権力者などの“訪問”“視察”を伝えるニュースでは、この手法がよく使われます。取材対象者と取材者の間で“フレーミング”で情報を出すことが事前に決まっているのです。

 たとえば2023年、ロシアのプーチン大統領がウクライナのマリウポリを“電撃訪問”したことをロシアの国営放送がニュースとして流しました。訪問そのものは事実ですが、ここで数々のフレーミングが行われていました。ロシア軍によって破壊された街の建物などは映されず、“復興”した新しい住宅や劇場などばかりが映るというのは、その代表例です。『すでにロシアによって街は新たな一歩を踏み出している』というメッセージが隠されているのです。

 同様のことは、日本でも珍しくありません。被災地が復興していることを総理大臣がアピールしたければ、“復興した建物”などをバックに映像に収まるようにお膳立てがされます。そのすぐ近くに生々しい災害の跡があったとしても、多くの場合、テレビカメラは映さない。総理側が指定した場所からお決まりの映像を撮影するだけです」

マユツバ思考の重要性

 スーパーや米屋の視察にせよ、同僚議員への支援を求める姿にせよ、カメラマンの位置は決められているため、発信者側が望む同じような「絵」だけが撮影され、流されることになる。

「彼らが視察したことそのものはウソではありません。だからそのニュース報道も『まったくのウソ』ではない。しかし『本当のこと』も伝えていない。
 
 記者たちはそこで何らかの疑問を持ち、ぶつけるのが本来の仕事ではないでしょうか。発信される情報を“ほんまかいな”と疑うのです。

 スーパーの現場に行けば、取材陣の立ち位置や茂木氏の動線が設定されており、社長がやってきて接待する。社長にだってよい宣伝の機会ですからね。そうした『役者と舞台設定』がなされているはずです。それも含めてニュースではないでしょうか。だからこそ『なぜアキダイなのか?』『それは誰が選んだのか? 誰が脚本を書いたのか?』を問いかけねばならないはずです。

 また茂木氏は、埼玉県川口市を視察して、『違法外国人ゼロを目指す』と発言しています。不法滞在の外国人も、外国人による違法行為もゼロが望ましいとはいえ、そもそもそんなことできるのか?というのは誰でも抱く素朴な疑問でしょう。日本人だろうが外国人だろうが、違法行為をするものは一定の割合で常に存在するわけです。ゼロを目指すとわざわざ言うからには、何らかの有効な手段がなければいけないはずですが、それについて突っ込んだやり取りがあったとは伝えられていません。番記者ならば長時間茂木氏に密着しているのだから、いくらでも質すことはできるはずですが、要は茂木氏の“言いっぱなし”をそのまま垂れ流しているのです。

 これは他の候補者についても同様です。それぞれの主張の妥当性、政策の実現可能性といったところには踏み込まずに、候補者の言い分をただ紹介しているメディアが多すぎるのではないでしょうか」

 もちろん、新聞やテレビなど大手メディアのみに問題があるというわけではない。烏賀陽氏は次のように警鐘を鳴らしている。

「大手マスコミに問題があるのは事実ですが、そのことはSNSやネットニュースのほうが信頼できるということにはつながりません。候補者自身はもちろんその支持者たちが拡散する情報はよりストレートなプロパガンダになっているのですから。

 結局は、受け手である私たちそれぞれが常に情報に対して“ほんまかいな”と疑う目を持つ思考――私は“マユツバ思考”と呼んでいます――を持ち続けないと、簡単に洗脳されたり、言動を操られたりする。それを常に念頭に置いて情報に接してほしいのです」

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