SNSを一触即発の“地雷原”に変えた「叩き活」の正体…「推し活」よりも“嫌いな相手を叩く”ことに快感を覚えるのはなぜか

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炎上しても余計な反論をしない

 笠氏は、叩き活勢にとって、相手が謝罪することは、「推し活でいうファンサや握手した時の感覚に近い」と分析する。そして、「自分が叩いたことで相手が反応したら、認知された! っていう快楽になる。ある種、これも歪んだ承認欲求なのか。行き場のない承認欲求を推し活ではなく叩き活で満たしているのかもしれない」と述べている。

 このように、叩き活勢は企業や個人を“謝罪”させることで、快楽を得ている。叩かれた側がひとたび謝罪すると、叩き活勢に成功体験を与えてしまう。こうして、相手はますます増長してしまうのだ。叩き活勢は企業にとってはモンスタークレーマーやカスハラに近いものがあり、付き合い方を検討しておくべきであろう。

 筆者は“マスゴミ”と呼ばれる立場なのでしょっちゅう叩き活のターゲットになるし、炎上は慣れっ子である。しかし、マスコミや著名人だけでなく、ラーメン屋の店主やコスプレイヤーなどの一般人も叩き活のターゲットにされる可能性が高くなっている。万が一、叩き活に遭った場合には、どのように対処すれば良いのだろうか。

 結論は、無視することである。炎上は基本的に3~7日もすれば鎮火するのだから、自分が悪いことをしていないのであれば、放っておくのが良い。反発したくなる気持ちはわかるが、黙って無視するべきだ。反論も述べるべきではない。前出のWEBメディアのKAI-YOUの炎上も、編集者が直後にコメントを書いてしまったために、さらに火に油を注ぐ結果になってしまった。

強気な発言がウリの著名人に要注意

 叩き活勢は叩くことが快楽なのであり、もともとそのコンテンツに興味がなかったり、縁がなかったりすることがほとんどだ。手当たり次第に叩けるターゲットを探しているのだから、黙っているのが一番の対策になるのである。Xに反論を書き込むと、そのぶん叩き活が行われる期間が延びてしまう。黙って沈黙するか、Xを離れるか、無視するのが鉄則である。そうすればいつの間にか鎮火する。

 しかし、叩き活の被害にあった人が著名人やある程度の社会的立場にいる人だと、その“信者”たちを動員し、加害者を叩かせようと扇動する例もある。やられたらやりかえすということなのだろうが、果たしてその行動は正しいのだろうか。かつての誹謗中傷の問題のように、叩かれた側だけが一概に悪いとはいえない事例も増えているため、叩き活は一層複雑な問題になっている。

 自分が叩き活をする側にならないようにするには、どうすればいいのか。筆者は、正義感の強い人ほど叩き活を始める傾向が強いと考える。ゴミをポイ捨てしたとか、喫煙スペース以外で煙草を吸っていたとか、小さなルール違反も許せなかったりするためだ。まずは、ポストやリポストをする前に落ち着くことが大切である。

 また、著名人のなかには攻撃的で強気の発言をウリにする人も存在する。そういった著名人のファン、すなわち“信者”は知らず知らずのうちに叩き活をしているケースが多い。著名人の発言に乗じて相手を攻撃することで、自分も強くなったと錯覚し、快楽を得ているのだろう。しかし、何かあっても、著名人は信者を守ってはくれない。いくらリスペクトしていても、批判的な発言に何でも同調しないように心がけるべきである。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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