「鬼滅」「呪術」はむしろ例外…深夜アニメで“作画崩壊”が頻発するのはなぜか 「アニメはコスパがいい」「絵が動けばそれで十分」という考えが蔓延する背景
動きさえすれば、それでいいのか
アニメーターは何かと低賃金であるかのように語られるが、決してそんなことはない。技術の高いアニメーターは引く手あまたであり、掛け持ちをしている売れっ子だと高い収入を得ている人も少なくない。しかし、人材育成が追い付いていないため、技術の高いアニメーターが、アニメづくりのルールを守っていない原画を黙々と直している実態があり、アニメ制作の現場は確実に疲弊している。
一部のスタジオでは人材育成に本腰を入れているが、アニメーターの多くはフリーランスであり、こうした現場は一向に改善される気配がない。さきの大手出版社の社員は「企画を立ち上げ、発注する企業側に、アニメに対する愛情がないのが問題だ」と話す。
「金儲けをしたいのに、なぜこんな質の低いアニメを作るのか、こんなクオリティーでいいと思えるのか、不思議がる人もいるかもしれません。それはシンプルな話で、関係者に“アニメの良し悪し”を見抜く審美眼がないからです。動けばいい、動けばとりあえずアニメだ、と思っている人が本当に多い。弊社の漫画が原作のアニメがなぜヒットしているのか、それすらよくわかっていない様子でした。
最近、SNSで話題になっている生成AIのアニメは、“アニメっぽいもの”が放送されればいいと思っている企業にとって魅力的です。私からすると論外なのですが、問題なのは、動けばそれでもいいと思う人が増えていることです。低品質でもいいという考えがアニメファンに広がらないか気がかりですが、もしそうなってしまうと、日本のアニメの質がどんどん低下してしまうのではないでしょうか」
今こそアニメの制作本数を抑制し、そのぶん人材を丁寧に育成し、全体のレベルの底上げを図る時期に来ているのではないか。そうしなければ、世界に誇る日本のアニメ産業の崩壊を招きかねないだろう。












