時代遅れの「ゲパルト自走対空砲」がウクライナ戦線で大活躍の真相…最新兵器が最大の成果をもたらすとは限らない「戦艦大和」の教訓

国際

  • ブックマーク

戦車より強いトヨタ車

「ドイツ製の最新兵器がウクライナ戦争で無力だという事実は『過ぎたるは及ばざるがごとし』という格言を思い出させます。極端にハイテク化した兵器は、泥濘の激戦地には向きません。旧日本海軍も戦艦大和・武蔵という戦艦対戦艦の艦隊決戦では世界一の戦艦を当時の最新技術を注ぎ建造しました。しかし完成時すでに戦場ので主力は空母機動部隊と空母艦載機になっていました。やはり兵器開発、運用においては戦場の実態を見極める先見性と正しく運用するバランスが重要なのです。百発百中のデジタル砲弾でも、絶対量が少なければ意味がありません。現実の戦場ではロシア軍が北朝鮮の安い砲弾をとにかく山のように撃てば、たとえ当たらなくてもウクライナ軍を苦しめることが可能なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 日本海海戦で大勝利を収めた東郷平八郎は「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」との言葉を残したが、旧日本海軍の上層部にも「百発一中の砲百門が勝る」と反論していた軍人は少なくなかった。同じことがウクライナの戦場で起きたと言える。

 そもそも“兵器”より民生品を上手に活用したほうが強いという戦訓もある。頑丈で壊れず、整備が簡単で、戦場で最も力を発揮する陸戦兵器は戦車ではなく、トヨタのランドクルーザーだという説は根強い。

 80年代に起きたアフリカのチャド内戦では政府軍も反政府軍もトヨタ車にバズーカ砲や重機関銃を乗せて“兵器”として使用して戦果を挙げた。そのためチャド内戦は「トヨタ戦争」と呼ばれた。近年ではシリア内戦で同じことが起きている。

 整備が大変で燃費が悪く、小回りが利かない戦車より、トヨタ車のほうが戦力になる場合も多いことは世界中の軍事関係者が認めている。

日本が整備すべき兵器とは?

「実はアメリカ軍は兵器の整備計画を白紙に戻しています。ウクライナ戦争の衝撃が影響を与えているのは間違いありません。あまりに極端なハイテク兵器は設計を見直す必要がありますし、ドローンの脅威に対抗する戦術・戦略を構築するまでは兵器の開発をストップするべきでしょう。東アジアでは中国の覇権主義が露骨になっており、自衛隊は対応を迫られています。防衛力の増強は急務ですが、拙速は慎むべきです。ウクライナ戦争から戦訓を学びながら、どんな兵器で日本を守るか熟考すべきでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 第1回【ウクライナの戦場で「ドイツ製のハイテク兵器」が使いモノにならない理由…最前線で酷評された最新兵器の“意外な欠点”とは】では、ウクライナの最前線ではハイテク兵器がいかに無力か、詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。