ボクシング界で「死亡事故」が頻発の“異常事態” 原因はまさかの「分からない」

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海外では起きていない

 井上尚弥(32)の世界スーパーバンタム級統一王座防衛戦が9月14日、名古屋のIGアリーナで行われ、見事勝利を飾った。チケットは発売10分で完売したという。だが、そんなボクシング人気を揺るがす不可解な事態が起きている。

「リング上で重大事故が頻発しているんです」

 と、スポーツライターが顔を曇らせる。

 一昨年12月以降、プロボクサー4人が開頭手術を受け、3人が死亡。今年8月2日の興行では結果的に2人が死亡するという悲劇が起きた。

「これまでの事故は4回戦が多く、“パンチを避け切れなかった”“レフェリーストップが遅過ぎた”といった技術不足が原因と指摘されていました。ところが、開頭手術に至った4試合は、一つが世界戦、二つがタイトルマッチ、残る一つが挑戦者決定戦、といずれも最高レベルの試合でした」

 しかも、

「そのうちの二つは、試合でダウンを食らっていないんです」

 では、原因は何なのか。

「それが分からないんです。レフェリーの判断が遅かったわけではありませんし。『トレーニング技術が向上し、パンチ力が上がっているわりに、防御力が追い付いていない』と指摘する人がいますけど、海外では起きていないんですよね。『日本人は最後まで頑張ってしまうから危険』との声もありますが、真偽のほどは定かでありません」

「救急車を配備」案も

 最近はやりの“水抜き”と呼ばれる減量法が危険だという声もある。だが、これも、

「減量は技術。国内選手に規制をかける案が出ていますが、そうすると海外の選手と不公平が生じます」

“救急車を配備”“試合前後に脳検査を実施”といった対策案も出ているが、

「民間の救急車は、配備に約20万円かかる上、いざ搬送時も赤信号で停止するので、普通に119番した方がよさそう。CTやMRIも、症状がないと保険が利かず1回3万~5万円もかかるので、現実的ではありません」

 アマチュアボクシングでも8月8日、選手が練習後に救急搬送された。開頭手術を受け、いまだに意識不明だという。22日には、プロとアマが垣根を越えて手を組み、緊急の合同医事委員会を開いて情報交換を行った。だが、原因究明と解決策案出には遠く及ばなかった。

「このような状況が続くと、子供にボクシングをさせようという親がいなくなってしまいます。

 日本ボクシング界の一大危機がそこにある。

週刊新潮 2025年9月18日号掲載

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