本マグロに次いで2番目に高級なのに“知名度が低すぎるマグロ”とは? ついに“改名して再デビュー”が議論される事態に

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「本マグロよりインドが好き」という市場関係者も

 魚のまち・築地場外市場(中央区)で、主にミナミマグロの握り寿司を店頭販売する「築地まぐろ みやこ」の店主によると、

「日本人やインバウンドの客から“これは何マグロですか?”と尋ねられ、ミナミマグロやインドマグロだと答えると、客はピンとこない表情を浮かべて“本マグロじゃないんですか”と言ったりする」。半信半疑な反応だが、そうした客が「店頭にあるテーブルで買った握り寿司を食べて、“おいしい”と喜んでくれるのをみると、ミナミマグロの知名度の低さを実感する」(店主)と話す。

 築地から移転した豊洲市場(江東区)でミナミマグロは「インド」と呼ばれ、高級マグロとして定着。陸揚げされたなかでも“上物”が運ばれるだけに、入荷状況によっては本マグロをしのぐ競り値がつくことも珍しくない。

 豊洲でマグロを取り引きするベテランの競り人は、「インドは本マグロに比べて酸味が少なく甘みが強いから、寿司ネタに一番合っていると思う」と太鼓判を押す。他にも「本マグロよりインドが好き」という市場関係者は少なくない。

 ところが、漁船から陸揚げされたミナミマグロ全体の価格をみると、大きく本マグロに水をあけられている。日本かつお・まぐろ漁業協同組合(同)によると、静岡県焼津港での今年1~7月までの価格は、1キロ当たりの平均が1600円ほど。本マグロの約2400円よりかなり安い。

 実は、ミナミマグロは3年前と比べて3割ほど安くなっており、採算割れからミナミマグロを漁獲対象とする漁業者が、ここ数年間で廃業に追い込まれるケースもあったという。

「南極マグロ」に改名も?

「いいマグロなのに知名度が低くて値が出ない」

 漁業関係者の嘆きの声が広がるなか、ミナミマグロの人気向上へ向けたイメージの刷新が必要とみて、同組合は漁業者や流通業者なども含め、別名となる新たな魚名を模索することにした。

 実際にミナミマグロの漁場は、南緯30度~45度、海面水温10度ほどの冷たい海域で漁獲後には、漁船上でマイナス60度の低温で凍結されて帰港する。マグロ類のなかでは、最も南極に近い海域で獲れるため、同組合は「南極マグロ」などを候補に、広く魚名を募っていくという。

 ただ、消費者庁によると、魚名表示は「標準和名あるいは、より広く一般に使用されている名称を表示することができる」(食品表示課)ため、別名が決まっても浸透するまでは、単独で使用することはできない。

 同組合は、11月24日に都内で一般向けのイベントを開催し、「南極マグロ」など別名を広く募集。同時に、多くの来場者にミナミマグロを無料で提供するなど、PRを展開していく。

 同組合の香川謙二組合長は、「ミナミマグロは漁業者が遠い冷たい海域で漁獲し、超低温で凍結させた国産、天然の高級マグロだということを多くの人に知ってもらいたい」と強く訴えている。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。

デイリー新潮編集部

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