「今年の阪神は何か違う」 春キャンプで“異変”が… 開幕前から光っていた「藤川球児」のマネジメント力

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 9月7日、本拠地・甲子園で2年ぶり7度目となるリーグ制覇を決めた阪神タイガース。チームを両リーグ史上最速となる優勝へ導いた立役者が、就任1年目の藤川球児監督(45)だ。指導者未経験のルーキー監督が起こした“ミラクル”の秘密を解き明かす。

 ***

目先の勝ちより選手の将来

「今季ほど、主力選手に故障者の出なかったシーズンは記憶にありません。藤川監督は取材に対し、“選手が健康であればうれしい”といった言葉をよく口にします。実際、コーチを飛び越え、監督が選手に直接話しかける姿が今シーズンは目につきました。自身も現役時代はケガに泣かされた経験を持つからこそ、選手の健康管理に人一倍気を配っている印象です」

 そう話すのは、スポーツ紙のトラ番記者だ。メジャーや中日ドラゴンズで活躍した野球解説者の川上憲伸氏(50)も、

「8月12日の広島戦では、好調をキープしていた主砲・佐藤輝明と中野拓夢内野手をベンチスタートさせてファンを困惑させました。両選手の体調を考慮した上でのスタメン外しでしたが、目先の勝ちにこだわらず、選手の将来を見据えた不敵な采配に、監督の自信を垣間見た思いでした」

 異次元の独走を支えた投手陣についても同じことがいえる。元中日の投手で野球解説者の今中慎二氏(54)が言う。

「優勝を決めた試合では、先発登板した才木浩人投手が危険球で退場するアクシデントに見舞われました。しかし湯浅京己投手が好リリーフを見せ、チームを救った。選手のコンディションを見極め、休養を取らせることも躊躇(ためら)わず、場合によってはファームから育成選手を抜てき。その大胆な起用法が投手陣の間に競争心を芽生えさせ、チームの活性化につながっています」

 藤川氏の指導法は“放任主義”などと評されることも多いが、実態は「メジャー流の管理野球だ」と話すのは球団関係者である。

「監督が各選手の状態や特徴を正確に把握しているからこそ、主力選手をあえて休ませる“引く勇気”が持てる。こういった姿勢はメジャーのマネジメントに近いものがあります」

「これまでの阪神と何か違うぞ」

 実はすでに開幕前、他球団には見られない異彩を阪神は放っていた。

「春キャンプを視察して、あんなに静かなキャンプは初めてだったので驚きました。選手たちからかけ声が上がることもなく、皆がただ黙々と練習に集中していた。“今年はこれまでの阪神と何か違うぞ”と感じました」(前出の今中氏)

 型破りとも映る采配の背景にあるのが、メジャーで過ごした3年間の経験だったとされる。

「藤川監督は“いつかGM(ゼネラルマネージャー)をやってみたい”と周囲に将来の夢を語っています。メジャー時代に、フロント主導で行われるチームづくりにカルチャーショックを受けたのが理由といいます。MLBエージェントの団野村氏とは今も付き合いがあり、日本もメジャーに倣ってGM主導システムを取り入れるべきだとの立場です」(前出のトラ番記者)

 結果が全ての勝負の世界で頭角を現わす“黒船”藤川。その裏で、秘かに岡田彰布前監督(67)にも注目が集まっているという。

「体調面の不安もあって2年で退任した岡田氏ですが、本心では監督を続けたかったのは周知の事実。後任が未経験の藤川氏と決まった時は“すぐに再々登板の機会が巡ってくる”と内心、期待していたとされます。ところが、まさかの最速優勝を果たし、その複雑な心中を慮る声が球団関係者から聞こえてきます」(同)

 果たしてビギナーズラックか、ホンモノか。藤川阪神の快進撃から目が離せない。

週刊新潮 2025年9月18日号掲載

ワイド特集「ニュース深堀」より

あなたの情報がスクープに!

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。