阪神「17ゲーム差」優勝も“日本シリーズに進出できない”リスク…CS反対派の元阪神4番は「ファンが興行の心配までする必要はありません」
検討に値する前後期制
あくまでも優勝したチームがポストシーズンに進むべき──これが広澤氏の主張だ。
「ですから理想的なポストシーズンを実施するには4リーグが必要でしょう。他にも3リーグ制とし、各リーグで優勝した3チームと、3リーグの中から最高勝率のワイルドカードで1チームを選ぶという方法も妥当だと考えます。もしリーグを増やすことが困難だというのなら、前後期制があります。日本のプロ野球ではパ・リーグが1973年から1982年まで実施していたので、50代以上のファンならご記憶ではないでしょうか。前期と後期の優勝チームがポストシーズンで日本シリーズ進出をかけて争いますから、2位や3位のチームは関係ありません」
今回は“阪神優勝効果”でCSの見直しを求めるファンの声は例年より盛り上がっている。その一方でCSを擁護する声も少なくない。中でも興味深い論点に「CSで消化試合が少なくなり、プロ野球全体が最後まで盛り上がる」との指摘がある。
確かに阪神はプロ野球史上最速となる9月7日に優勝を果たした。CSが導入される前なら、セ・リーグは延々と消化試合が続いたはずだ。観客動員数が激減したり、テレビや新聞といった大手メディアが取り上げることが減ったりしたかもしれない。
だが広澤氏は「まず声を大にして言いたいのは、プロ野球ファンがチームの興行まで心配する必要はないということです」と反論する。
阪神に押し付けられる“歪み”
「プロ野球チームの親会社の中には、財務諸表を公表しているところがあります。機会があれば一度、見ていただきたいです。社によっては数千億円にものぼる内部留保を計上しています。また前後期制でも消化試合は少なくなりますが、それよりもセ・リーグで中日が観客動員を伸ばしていることが興味深いと思っています。現在の中日は連戦連勝の常勝球団というわけではありません。それでもファンに愛されているのです。近年のプロ野球ファンは選手の推しなど、楽しみ方が多様化してきました。勝ち負けにこだわらないファンも増えているのです。消化試合でも多くのファンが詰めかけるようにするには、チームの営業努力が重要です。CSの実施と関連付けるべきではないと思います」(同・広澤氏)
広澤氏は今、CSの見直し論が盛りあがりを見せていることに「率直なところ、残念な気持ちのほうが強いです」と言う。
「ファンの意見や要望を球界が受け入れるにしても、今年2025年は絶対、CSが開催されるわけです。今季のオフに見直しが始まる公算が高いという声も耳にしましたが、実施されるにしても来年以降の話でしょう。CSが問題だということは以前から分かっていたはずです。にもかかわらず、圧倒的な強さでリーグ優勝した阪神が、制度の歪みを引き受けさせられる形になるわけで、それはどうしても納得がいきません」(同・広澤氏)




