「フジテレビの株価はなぜ上がった?」「今後の株価は?」 キー局で唯一甘かった「アクティビスト対策」がもたらした“奇妙な事態”
同業他社は皆「平時型」の防衛策を導入したのに……
そんなフジMHDはこれまで、「平時型」の買収防衛策を導入したことがまったくありません。その理由こそが、フジMHDをアクティビストが群がる窮地に追い込んだ諸悪の根源ではないかと私は思うのです。
なぜフジMHDが平時型買収防衛策を導入しなかったのかを分析する前に、同業であるキー局の平時型買収防衛策の導入状況を述べておくと、実はフジMHD以外の日本テレビ、TBS、テレビ朝日、テレビ東京はすべて平時型買収防衛策を導入したことがあるのです(TBSは現在も継続し、他は廃止)。
TBSはかつて楽天の買収ターゲットになったことがありますし、古くはテレビ朝日もソフトバンクの孫氏が豪メディア王のルパート・マードックと組んで実施した買収騒動もありました。そしてニッポン放送がライブドアに狙われるなど、放送局はけっこう買収対象になっているのです。
奇妙な「株価上昇」のワケ
このように数多くの会社が買収対象になった業界は、過去、こぞって平時型買収防衛策を導入する傾向がありました。テレビ局以外だと、私鉄業界です。阪神電気鉄道が村上ファンドに大量の株式を買われ、結果、阪急電鉄と経営統合することになりましたが、当時、ほとんどの私鉄各社が「次はわが社かもしれない」と危機感をもち、平時型買収防衛策を導入しました。
日本の会社は横並び意識が強いせいか、業界各社が買収防衛策を導入すると「わが社も入れておいた方がよいだろう」と考える傾向が強いですし、ましてやキー局でフジMHD以外のすべての会社が平時型買収防衛策を導入している中でフジMHDだけが導入しなかったのにはかなりの違和感があります。
なぜフジMHDは平時型買収防衛策を導入しなかったのでしょうか。
当然、内部では買収防衛策の必要性を検討したことでしょう。しかし、平時型の防衛策を導入したら株主のウケが悪いと思ったのか、絶対的トップに君臨していた日枝久氏にライブドアのときの嫌な話を経営陣がしたがらなかったのか、あるいは単なる怠慢で何も考えてこなかっただけなのか……。
いずれにしても平時型買収防衛策を導入しないままでいた結果、アクティビストのマネー戦争に巻き込まれ、一連の不祥事で会社の価値は毀損していくのに株価だけが上昇し続けるという奇妙な事態を引き起こしてしまった。アクティビストに都合よく利用されただけですから、生き馬の目を抜くかのようにアクティビストが売り抜けてしまえばこの株価上昇も長くは続かないでしょう。
〈有料記事【フジの買収防衛策の“盲点”とは アクティビストの本当の狙いと「“有事を起こさない”ための企業の備え」】では、有事型・平時型という買収防衛策の違いの詳細や、「有事型」が主流になっている理由、本当の意味で会社を守るための考え方などについて、詳述している〉





