「たったひとりの年もあったのに…」 『国宝』大ヒットで“歌舞伎俳優養成所”の問い合わせが爆増していた 「劇場も大入り日が続出」
日本が誇る伝統芸能の一つ、歌舞伎を題材にした映画「国宝」の記録的な大ヒットが、梨園に思わぬ恩恵をもたらしている。
***
【写真を見る】「完璧なお顔」「女性にしか見えない」 吉沢亮の美し過ぎる白塗り姿
席の9割近くが埋まる“大入り日”が続出
「実写の邦画で興行収入が100億円を超えたのは、平成15年に公開された『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来、22年ぶり。劇場公開が始まった6月以降、歌舞伎座の来場者も急増しています」
とは歌舞伎担当記者。
「今年の5月から6月、八代目尾上菊五郎襲名披露興行が盛大に行われましたが、その前の2~4月は観客の入りが半分ほどの日が続きました。ところが7月に入って席の9割近くが埋まる大入り日が続出しています」
映画の影響は明らかで、
「連日、劇場が用意しているイヤホンガイドの貸し出し所には長蛇の列が。作品のあらすじや見どころ、歌舞伎独特の約束事や役者の所作、小道具や化粧の意味などを分かりやすく解説してくれますからね。歌舞伎鑑賞に慣れていない人が増えたせいでしょう」
映画「国宝」は、任侠の家に生まれた男性が歌舞伎の名門の家に引き取られ、その家の御曹司と切磋琢磨しながら、女形として人間国宝に大成する姿を描く。それぞれ、演じるのは吉沢亮(31)と横浜流星(28)というイケメン俳優だ。
「梨園とは無関係な家に生まれた場合、歌舞伎役者になる道は二つ。国立劇場に併設されている養成所に入所するか、坂東玉三郎(75)や片岡愛之助(53)のように、歌舞伎役者の養子や弟子に入るかですね」
8月14日から4日間、東京・浅草公会堂において養成所出身者の「稚魚の会」と、弟子入り組からなる「歌舞伎会」の若手中心の合同公演が行われた。観劇した芸能デスクが言う。
「言うなれば“免許取り立て”の発表会。昨年までは客席の半分が埋まる程度だったのに、今年は連日ほぼ満員。驚きましたよ」
入場料は1等席が7000円で、最も安い3等席は3000円。歌舞伎座の本公演(2部制)の1万7000円と比べると、かなりのお得感だ。
「手頃な価格のせいか、観客には20代から30代と思しき若い世代が多く目につきました」
「問い合わせが飛躍的に増えた」
昭和45年に開設された、国立劇場養成所の歌舞伎俳優研修は女人禁制。応募資格は中学校卒業以上の男子に限られ、年齢は23歳以下。経験は不問で、歌舞伎とは無縁に育った若者たちに歌舞伎の実技や日本舞踊、発声法、化粧や着付けの作法、立ち回りなどを2年間にわたって教え込むという。現在、活躍する歌舞伎俳優はおよそ300人だが、その約3分の1が養成所出身者とされる。
「かつては毎年、15人ほどの新入生を迎えていたものの、最近は2~3人。たった一人という年もありました。ところが、『国宝』が公開された6月以降、入所に関する問い合わせが飛躍的に増えているんです」
劇場側も、降って湧いたような“特需”に前のめり。
「映画では吉沢と横浜が『二人藤娘(ににんふじむすめ)』を踊る場面が出てきます。藤の精が娘の姿となって恋心を舞で表現する話ですが、10月の博多座と京都・南座の『市川團十郎 特別公演』では、この演目が上演されます。『国宝』を見たという座長の市川團十郎白猿(47)は、会見で“これ、映画のあれじゃん、みたいな感じになるのも大事かな”と、映画を意識して演目に据えたことを隠しませんでした」
昭和以来のブーム再来!?










