カミソリを飲んだような痛みはおおげさ? 新型コロナの新変異株「ニンバス」が関東でも流行か…感染広がる九州の臨床データを見てわかったこと
コロナの感染が南西から広がる理由
素朴な疑問がある。なぜ日本列島の南西から北上する形で感染が広がっていくのだろうか。
先の藤田医師が言う。
「感染症の流行に関して、沖縄は極めて特異な場所です。観光客が多いことに加え、アメリカではやっているウイルスが、米軍基地のアメリカ兵を介してまず沖縄に持ち込まれることが多いのです。沖縄は中国に近いため、中国からウイルスが持ち込まれたのでは、という声もありますが、コロナウイルスに関しては米軍基地経由が多いことが感染データから判明しています」
3年ほど前に「オミクロン株」がはやった時も、沖縄県北部の米軍基地から感染が拡大したことが分かっているという。
「要するに、沖縄は海外からのウイルスが真っ先に入りやすい場所なのです。今回のニンバスがどこから持ち込まれたのかは、現在は証拠がないので何とも言えない状況です。ただ、ニンバスの流行は日本よりアメリカが先だったので、今回も米軍基地経由だったと推測できます」(同)
そうした沖縄特有の事情に加えて、
「そもそも、夏のコロナは沖縄から、冬のコロナは気温や湿度の低い北海道から流行が始まる傾向があるのです」(同)
先の佐藤氏もこう話す。
「夏の感染症は、最初に夏になるところから始まり、冬は最初に冬になる場所が起点になります。日本だと、夏は一番西に位置していて最初に夏になる沖縄から感染が始まるわけです。なぜかというと、暑くなってくるとエアコンの効いた部屋にこもり、換気をしなくなり、さらに室内の湿度が低下するからです。感染の波はこれからだんだん西から東に広がっていくでしょう」
ニンバスの別名は“カミソリの刃の喉”
「ニンバスは、アメリカでは別名『レイザーブレードスロート』、カミソリの刃の喉と呼ばれるくらい、喉がめちゃくちゃ痛くなることがある、とされています。カミソリの刃で喉を切ったかのように喉が痛くて、ご飯も食べられない、水も飲めないという状態になるというのです。これはもう普通のかぜなどと比べ物にならないくらい痛い、と……」(佐藤氏)
が、実際の臨床現場では、
「患者さんは二極化しています。ワクチン接種3回以上もしくは1年以内に新型コロナに感染した人は、ニンバスに対する免疫をある程度保持しているためです。この免疫しだいで、非常に症状が強くて、高い熱と激しい喉の痛みも出てという方と、熱もなくちょっとだけ喉が痛いという二つのパターンに分かれています」(同)
それでは、“カミソリを飲んだような喉の痛み”という症状については?
「激しい喉の痛みを訴える人は10%くらい、ちょっとだけ喉が痛いという人が約30%、喉の症状がなく発熱、頭痛、倦怠感などの症状の人が約30%、ほとんど症状のない人が約30%、といったところです。痛みが出ている人の中には、ご飯も水も喉を通らない、ということで脱水症や栄養失調になってしまう高齢者もいます」(同)
先の藤田医師も次のように解説する。
「デルタ株までを含む、コロナウイルスが感染拡大した当初のウイルスは、肺にあるレセプター(細胞に存在する受容体)を通して体に侵入することが多く、肺炎になる方が多かったのですが、オミクロン株以降は咽頭部にある唾液腺のレセプターを通して入ってきて軟口蓋に炎症が現れるケースが多いようです。ニンバスも喉や口、鼻などの上気道に症状が現れます」
〈【間もなく関東でも流行か…読んで備える新型コロナの新変異株「ニンバス」の全て なぜ沖縄から広がる? 激しい痛みは本当? 飲むべき薬は?】では、実際にニンバスに感染した男性の体験談や、処方薬の選択肢、ワクチンの効果など、医師や専門家に取材して分かった感染前に知っておくべきニンバスの特徴を5000字にわたって詳報している〉
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