不満があって転職しても「古巣の悪口」は絶対に言わないほうがいい…退職代行などもってのほか“円満退社”が生み出す想像以上の価値とは
24年間で1億円ほどは仕事をいただけた
だが、実際にそういう人物がいるのだ。A氏はプロジェクトで知り合った若い女性を口説きまくったり、出世が早くある程度の肩書があるから先輩社員を見下したりもして、社内では評判が悪かった。外部の女性へのセクハラ疑惑がタレこまれた時は、社内のコンプラ部署が頭を抱える事態に。そんな彼が意気揚々と「私は優秀だからヘッドハンティングをされた。こんな会社よりも私の能力を活かせる会社に行くのである!」的に宣言して辞めていったのだが、正直社内の人々は「やっと辞めたか」「せいせいしたわ」といった感想しか持っていない。
よって、同氏が次の会社を辞めた時は「どの口が言ってたんだよ(笑)。重要ポジションで活躍するはずだったんじゃない?」なんて揶揄の対象になったし、あれだけ古巣に砂をかけて去ったのだから、彼に対して仕事を出そうとする人などいるわけがない。
一方、私の場合、辞めた理由はとにかく残業時間が長過ぎることにあった。広告業界は慢性的に長時間労働が蔓延していた時期で、他業界に移った方がいいと思った。とはいっても、広告業界がキツいというよりは、サラリーマンという生き方が辛かった。何しろ満員電車で通勤しなくてはならないし、客の言うことが絶対であり、組織を背負っている以上歯向かうのは無理。
だったらもういっそのことサラリーマンは辞めて後はテキトーに考えるか、ということでとりあえず無職になった。無職の期間中も古巣の人々は私を食事に誘ってくれたりして、「お金は大丈夫?」などと心配してくれた。無事、フリーランスとして仕事を獲得できた時は安堵してくれたものだ。
かくして、私も彼らの会にカネの心配をせず参加できるような立場になり、以来24年間交流が続き、今回の大宴会に繋がった。思えば古巣とその関係者はフリーランスの私に仕事をたくさん出してくれた。この24年間で1億円ほどは仕事をいただけたと思う。それも円満退社あってのこと、さらには古巣の悪口を言わなかったお陰である。



