「爆笑レッドカーペット」が話題になった明確な理由 ショート動画時代に見えた可能性

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渇望されていた場

 そんな状況の中で「爆笑レッドカーペット」が復活したことは、視聴者にとってまさに「渇望されていた場」の再来だった。短いネタ時間の中で芸人が勝負するスタイルは、YouTubeやTikTokに慣れた若い世代にとっても馴染みやすく、今の時代に意外なほどフィットした。つまり、単に過去の番組がそのまま当時からの視聴者に受け入れられただけではなく、かつて斬新だったフォーマットが、現代を生きる若い世代にも刺さったのである。

 たとえば、ブームが過ぎて人気が急落して「一発屋芸人」と呼ばれていたような芸人が、この番組に出てきて、堂々とネタを披露していた。当時を知っている人は懐かしさを感じると共に、改めて見直すと面白さを再発見できたりもする。

 一方、一発を当てた時代を知らない若い視聴者は、「一発屋芸人」という色眼鏡をかけることなく、ネタそのものを純粋に楽しむことができた。両方の世代が楽しめる構造になっていたからこそ、この番組は話題になったのだ。

 社会全体が複雑化し、笑いを取り巻く言葉や表現の規制も厳しくなっている時代に、「面白いネタを1分間で見る」という単純なコンセプトの番組は輝いて見えた。そこで提供される純度の高い笑いは、ある種の安心感や爽快感をもたらした。この番組には「難しいことを考えずに笑える」という原点回帰の力があった。だからこそ幅広い世代に受け入れられて話題になったのである。

 ネタ番組はもう時代遅れだと言われたこともあったが、お笑いというものの根本的な魅力が失われたわけではない。「爆笑レッドカーペット」は、ネタ番組復権のきざしを感じさせるハイクオリティな番組だった。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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