「長嶋さんの体にボールをぶつけてしまい、先輩から頭をゴツンと…」 立教大学OBが明かす長嶋茂雄さんの「プロデビュー前」の素顔

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「長嶋さんの体にボールをぶつける大失態を……」

 高校時代はピッチャーだったが、無名だったためレギュラー陣の練習を横目に黙々とランニングをしていた。そこへ千載一遇のチャンスが訪れる。ブルペンでの投球を許され、速球を投げ込むと、たまたま見ていた長嶋さんから、「“あいつの球を打たせろ”と直々に指名があった」という。

「いきなり神宮のスター選手を相手にバッティングピッチャーを務めることになったので、緊張のあまり思い切り投げたボールの制球が乱れ、あろうことか長嶋さんの体にぶつけてしまう大失態を演じたのです。それで長嶋さんの打撃練習は打ち切り。合宿所へ帰ってしまったのですが、デッドボールを受けたことにまったく怒らないし、痛がりもしませんでした。ただし、私は上級生から居残りを命じられ、頭をゴツンと一発やられたあと正座させられ、“おまえは大事な選手にボールを当てて何をやってんだ!”とお説教を食らいました」

 稲川さんは大学では芽が出なかったものの、ノンプロを経て62年に大洋ホエールズに入団して活躍。通算83勝を挙げ、オールスター戦にも3回出場。長嶋さんと一緒にベンチに入ったが「畏れ多い大先輩」で話しかけることはできなかったという。

「珍プレー」に観客は拍手喝采

 レギュラーシーズンでは長嶋さんと何度も対戦、通算打率でいえば3割台は打ち込まれたそうだが、中にはこんな珍プレーも生まれた。

「ベンチから長嶋さんを敬遠しろというサインが送られてきたので、指示に従ってキャッチャーが立たなければ捕れないような高めのボール球を投げた。そのときとっさに野性のカンが働いたのか、高めのボール球を飛びつくようにしてバットを振ったのです」

 結果はボテボテのサードゴロ。稲川さんは「打ち取った」と思った。ところが、

「次の瞬間、サードを守るマイケル・クレスニック(登録名・クレス)が、ボーッと突っ立ったまま微動だにしない。彼にしてみれば、まさか敬遠のボール球を打つとは思わなかったのでしょう。結局、内野安打になってしまいました」

 この長嶋さんの度肝を抜くプレーに観客は大喜び。球場内が割れんばかりの拍手喝采で沸いたことは言うまでもない。

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