千鳥・大悟も困惑!? 高学歴芸人の意外な苦悩とは 「頭でっかち」と距離を置かれることも

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

伸び悩む危険

 学歴を前面に出しすぎると芸風が限定され、キャリアの幅を狭めるリスクもある。学歴ネタだけで数年はやっていけても、同じ売り方を続ければ「もうそのキャラは見飽きた」と受け止められる可能性が高い。学歴は強力な武器である一方、それに依存しすぎれば伸び悩む危険をはらんでいる。

 さらに、芸人社会においては「頭でっかち」と思われがちで、ほかの芸人から距離を置かれることもある。芸人の世界は上下関係やノリを重んじる文化が強く、知識や論理で相手を圧倒するスタイルは時に「空気が読めない」と解釈されてしまう。

 あえて自分の学歴を自虐的にイジったり、自らネタにしたりすることで周囲に受け入れられやすくなる場合もある。インテリのイメージを逆手にとって芸人としての魅力を打ち出せるかどうかは、彼らが長く生き残るための重要なカギである。

 8月4日・11日放送の「大悟の芸人領収書」(日本テレビ系)という番組では、2週にわたって高学歴の若手芸人たちがゲストとして出演して、MCの千鳥の大悟と対峙したことが話題になっていた。大悟は高卒であり、勉強は大の苦手。そんな彼と高学歴芸人たちとのやり取りは見ごたえがあった。

 高学歴芸人の1人が参考書を買って勉強していたという話題が出たとき、大悟は「参考書って教科書に載ってないようなことが載ってるの?」と尋ねた。「教えるのが上手い人が教科書をもう一回書き直したようなものだ」という趣旨の説明をされて、大悟は「じゃあ、なんで教科書にそれを入れてないの?」と問いかけた。

 高学歴芸人たちは、この大悟の素朴すぎる疑問を前にして、何も言えず沈黙してしまった。その後、ようやく口を開いたGパンパンダの星野光樹が「子供に質問されてるみたい」と言ったところ、すかさず大悟が笑いながら「誰が45の子供や!」とツッコんだ。

 また、弁護士芸人のこたけ正義感が、芸人のネタのセリフを書き起こして研究していると話すと、大悟は「気持ち悪い」と嫌がっていた。そして、こたけが千鳥の漫才に出てくる「イカ二貫」というフレーズがロジックではどうしてもたどり着けないのだと語ると、大悟はそのネタについて解説をした。そして、解説の最後にこの話は「大学では教えてもらえないやつ」だと言って微笑んだ。

 これらのやり取りは、大悟という芸人の底知れぬ魅力を改めて印象付けると共に、高学歴芸人の限界と課題も浮き彫りにした。笑いには、理屈でたどり着ける領域と、そうではない領域がある。高学歴芸人たちは持ち前の頭脳を生かしてこれからお笑い界をどのように「攻略」していくのか、興味が尽きない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。