「露出が少ない」「タトゥー嫌悪」でレビュー大荒れ 長濱ねる写真集は本当に駄作なのか

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(3)前作との内容の差

 そして最後は長濱が8年前に出したファースト写真集「ここから」と比べて、期待外れだったという声である。

 人気アイドルの写真集を多数手がける細居幸次郎が撮影した前作「ここから」(講談社)はクリアな画質、長濱の水着が堪能できるグラビア的な写真カットやアップの写真に、デート気分が味わえるカメラ目線と男性のアイドルファンが望む長濱の姿が収められたアイドル写真集の傑作だった。今回の写真集とは真逆の作品で、その分失望も大きかったのだろう。

 どちらも長濱との旅行を味わえる写真だが、細居「ここから」は長濱との恋人気分が味わえる一方、高橋の「長濱ねる」は女友達との旅行気分が味わえる。同じ被写体、同じ旅を思わせる写真集でも真逆の味わいがあって面白い。

「タトゥー」を読み解くと

 長濱の写真集と、レビューの反応を見て感じるのは、長濱に変わらないでいてほしいと願うアイドルファンと、変わっていこうとする、もしくは本来の自分の姿を見せようとする長濱とのずれだ。

アイドル時代の長濱はおとなしく聡明で、でもどこか儚げという男性が望む理想像だった。一方でエッセイ「たゆたう」などで垣間見える長濱の内面は、意外に毒を吐くなど等身大の普通の女性であることがわかる。同エッセイではアイドル時代について「周りに見えている自分と、私が知っているはずの自分がどんどん乖離していった」と振り返っており、実際の自分とのずれを感じていたようだ。

 今回の写真集では長濱の脇近くにハートのタトゥーがあったことも大きな話題を呼んだ。アイドル、とりわけ清楚なイメージもあった長濱のタトゥーについては「嫌いになった」など否定的な声も上がっていた。一部の研究では、タトゥーは自己像とのギャップを埋める手段になるとされる。今回のタトゥーも、世間的イメージと異なる自分を見せたいという長濱の意志にも感じられた。

 8年前の「ここから」では写真からも感じられた不安、所在なさげな儚さが、今回の写真集には感じられなかったのも印象的だった。そこにいたのはアイドルではなく、成長し自立した女性の姿だった。自分の名前を冠した写真集の長濱こそ、今の自分、今のみんなに知ってもらいたい自分なのだろう。

 アイドルとしての長濱が好きな人には受け入れがたい作品であり、好き嫌いも分かれるだろう。ただ星1一色で片づけるような駄作ではない。被写体の現在地を考えれば、興味深い作品と言える。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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