黒髪を貫き、スキャンダルは皆無 王道アイドル「道重さゆみ」が“最高の推し”だったワケ
ネットミーム化される名言も
この頃、さんまとの間でミーム化される名言も生まれる。その要旨は、アイドルとファンの関係についてさんまが「遠くまで握手会に飛んで来てくれる男なんておれへん。彼氏だって旦那だってそんな男おらん。ファンだけや。だからアイドルの恋は隠さなあかん。それがファンの誠意や」と語ったというもの。
ネットではアイドルにスキャンダルが起きる度に、このミームが蒸し返されるのだが、おそらくは脚色されており元ネタとなったと思われるのは、2012年8月のヤングタウン土曜日でのやりとりだ。
モーニング娘。加入以来ずっと髪を染めていなかったが、「黒髪が好き」というファンの声に応えて、ずっと黒髪でいたいという道重。これには、さんまも「ファンのイメージを裏切ったらあかん」と相槌。さらに、さんまは「もし電撃交際! となって彼氏がいたとなっても、今まで使ったお金は絶対ファンの方が多い」「彼氏だからって東京から大阪まで飛んでくる男もいない。俺は東京でもめごと起こして大阪まで逃げてくることあったけど(笑)」「会いたい!と思って来てくれるファンを裏切ることになったら、ファンが怒って当然やからね」と、ファンが推しに抱くイメージは守るべきとユーモアを交えて語った。
道重も今に至るまで黒髪で通し、スキャンダル皆無で独身と、24時間ファンの期待に応える“最高の推し”でいた。そして、こんな風に自身の引き出しを広げてくれたさんまにも、度々ブログで感謝の気持ちを伝えている。
道重は2014年11月26日に、当時のグループ在籍最長記録を打ち立ててモーニング娘。'14を卒業。約2年強の休止期間を経てソロでの音楽やライブ活動を再開し、23年のハロー!プロジェクト25周年記念コンサートなどでも元気な姿を見せていたが、同年12月に強迫性障害を公表。今年1月にこの夏での芸能界引退をブログで伝えた。
病をおしてもファンのために表舞台に立とうとし、さらに引退までに半年もの期間と、最後のライブツアーを用意し、しっかりファンが別れをかみしめる期間もつくった。何よりもモーニング娘。が好きで、自分を推してくれるファンを大切にしたい、が原動力。思うような歌って踊る活動ができなくなったら、表舞台を去るという潔さも支持されるゆえんだ。
アイドルらしいかわいさを保ちつつバラエティーでキャラクターを確立、引き際の潔さは、8年前に引退して以来一切表舞台に出ていない嗣永とも重なる。
モーニング娘。のOGとしては、今でもカリスマ的なパフォーマンスを保つ後藤真希、すっかりバラエティータレントになった藤本美貴や矢口真里らも健在だが、道重は卒業してからも、イベントの生の現場でのファンとの交流を大切にしていたことが特徴だろう。
ファンのことを「変な人が多い」といじり、圧倒的なパフォーマンス力ではなかったかもしれないが、客席が彼女のイメージカラーのピンク色で染まる熱気を愛してきた。ファンの「道重一筋」(イベントでよくファンが着ている、ピンク色のTシャツに描かれたスローガン)の思いに応え続けた22年間であり、だからこそこれからも、理想のアイドルの生き様として記憶されるだろう。






