「踊る」「南極物語」をごぼう抜き 「国宝」大ヒットのウラに「グローバル人材」結集
吉田修一氏の原作小説に“血”
作家・吉田修一氏の原作小説に“血”という鮮烈な色を吹き込んだのが李監督というわけだが、日本の伝統文化に対する外部からの視点もこの作品の大ヒットの背景にありそうだ。
「『国宝』の撮影監督を務めたのはチュニジア出身のソフィアン・エル・ファニ(Sofian El Fani)氏(51)です。彼は2013年の第66回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲得した映画『アデル、ブルーは熱い色』の撮影監督として世界的に知られています。
『国宝』はその映像美が高く評価されています。これは複数の異なる場所や時間軸のシーンを交互に切り替えることで、映像に奥行きや緊張感を与えるカットバックの手法やクローズアップとズームアウトを多用して、歌舞伎の舞台を躍動的にとらえたファニ氏の力量がいかんなく発揮されているためです」(前出の映画ジャーナリスト)
このような手法は、李監督の作品「フラガール」(2006年)のラストシーンで登場した集団フラダンスのシーンを彷彿させる。また、同じく監督した「流浪の月」(2022年)では、米アカデミー賞受賞の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(2019年/ポン・ジュノ監督)で撮影監督を務めたホン・ギョンピョ氏とタッグを組んでいる。
「『国宝』の美術監督を務めている種田陽平氏は、スタジオジブリの米林宏昌監督作品『思い出のマーニー』を担当したことで知られていますが、チャン・イーモウ監督の中国映画『金陵十三釵』や俳優のキアヌ・リーブス初監督作品『ファイティング・タイガー』、クエンティン・タランティーノ監督『ヘイトフル・エイト』の美術監督も務めるなど世界的に活躍しています。1993年公開の中国・香港・台湾合作映画『さらば、わが愛/覇王別姫』のような映画を作りたい、という李監督にとっては絶対に欠かせない人材だったでしょう」(同)
まさにグローバルな人材の集結が日本の伝統文化・歌舞伎の世界に新たな面白さを吹き込んだといえそう。その一方で李監督の“熱血”ぶりを指摘する声も。
「『フラガール』ではダンサー役の蒼井優(39)や南海キャンディーズの山崎静代(46)らに1日12時間、2か月にわたって特訓を命じ、ダンスで胃腸がねじれるため出演者は吐きながら練習を重ねたといいます。今回の『国宝』でも主演の吉沢と横浜流星は、撮影期間を含めて1年半を歌舞伎の稽古に費やしました。学芸会を見ているような昨今の芸能界では考えられない2人の役柄へののめり込みぶりが、大成功の最大の理由かもしれません」(東宝関係者)
日本映画史上稀に見る傑作。快進撃はどこまで続くのか。






