「踊る」「南極物語」をごぼう抜き 「国宝」大ヒットのウラに「グローバル人材」結集

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吉沢亮主演、175分の大作

 俳優の吉沢亮(31)主演の映画「国宝」(東宝配給、原作:吉田修一『国宝』)が異例の大ヒットを続けている。任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢)が上方歌舞伎の名門の家に引き取られ、その才能を武器に世襲の歌舞伎界に挑んでいく姿を描いた175分(2時間55分)の大作だ。

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 6月6日に公開され、興行収入ランキング初登場3位からのスタートとなったが、評判はジワジワと広がり8月11日までの公開67日間で観客動員数677万人、興行収入95.3億円を突破。実写映画としては「キングダム 大将軍の帰還」(2024年)が記録した80.3億円を超える令和最大のヒットとなり、100億円超えも時間の問題といわれている。

 ベテランの映画担当記者がこう指摘する。

「平日の初回上映に足を運んだところ、すでに場内は高齢者層で満席状態。こんな光景はしばらく見ていなかったので感動しましたよ。実写映画のランキングでは『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)が173.5億円で1位、2位は『南極物語』(1983年)の110億円、3位は『踊る大捜査線THE MOVIE』(1998年)の101億円です。

『国宝』は毎日1億円ずつ興収を積み上げていますからこのままロングランが続き、『踊る大捜査線THE MOVIE』と『南極物語』をごぼう抜きして、歴代2位に躍り出るのは確実。朝から晩まで自局映画のPRを垂れ流すテレビ局系の映画ではない作品が大ヒットすること自体、格別な意味があります」

 今年度の映画賞を総なめするのも確実な「国宝」。大ヒットの理由としては吉沢をはじめ横浜流星(28)、高畑充希(33)、寺島しのぶ(52)、永瀬正敏(59)、渡辺謙(65)ら共演陣の演技力もさることながら、「歌舞伎」という日本の伝統文化を題材に、画期的な人間ドラマを描き切ったことも高く評価されている。

 映画を見た観客の間からは「この映画を見て日本人でよかったと思った」という声も上がっているが、実はこの作品こそハイブリッドでグローバルな作品の見本のようだと分析する映画評論家もいる。

「芸が高みに向かえば向かうほど孤独が深まっていく喜久雄の姿が印象的ですが、その苦悩の原因は体に受け継いだ任侠の血のせいです。だからこそ喜久雄の芸には凄みがあり妖艶なオーラを放つのです。自らの血と向き合うストーリー展開は朝鮮学校出身の在日コリアン3世である李相日(リ・サインル)監督の人生と重なります。

 李監督が卒業制作で撮影した『青・chong』(1999年)は、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)のグランプリを含む4つの賞を受賞する話題作となりましたが、この映画も民族の受け継いだ“血”がテーマとなっているのです」(映画ジャーナリスト)

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