本丸劇場「丸の内TOEI」閉館で気になる「東映」の今後…“東宝ひとり勝ち”の現状を打破できるか
東宝の“ひとり勝ち”状態に
2000年に東映は「株式会社ティ・ジョイ」を設立。日本初のデジタルシネマ上映設備を整えたシネマコンプレックス(シネコン)として事業を開始した。同社傘下のシネマコンプレックスチェーンとして、「T・ジョイ」「ブルク」「バルト」「ミッテ」の4つのブランドを中心に展開しているが、全国で20館の展開にとどまっている。それに対して、東宝は03年に外資系のシネコン「ヴァージンシネマズ・ジャパン株式会社」を買収。社名・館名共に「TOHOシネマズ」に変更され、現在全国で89館を展開している。
「これにより、東宝は力を入れる作品の場合、全国で350館規模での公開が可能になりました。TOHOシネマズを展開することにより、年々、東宝の“ひとり勝ち”が加速することになります」(同前)
00年から昨年まで、東映作品でトップの興収を記録した作品で「大ヒット」と言える興収30億円以上を記録した作品は以下の10本。
「バトル・ロワイアル」(00年) 31.1億円
「男たちの大和/YAMATO」(05年) 50.9億円
「相棒-劇場版-」(08年) 44.4億円
「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(09年) 48.0億円
「相棒-劇場版II-」(10年) 31.8億円
「ONE PIECE FILM Z」(12年) 68.7億円
「ドラゴンボールZ 復活の『F』」(15年) 37.4億円
「ONE PIECE FILM GOLD」(16年) 51.8億円
「ONE PIECE STAMPEDE」(19年) 55.5億円
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(21年) 102.8億円
そして22年は「THE FIRST SLAM DUNK」も164.8億円を記録。東宝に一矢報いたのだが……。
「結局、もうかっているのはすでに多くのファンを獲得している人気アニメの劇場版ばかり。『相棒』はテレビ朝日のシリーズ視聴率がシーズンを重ねるにつれてダウンしていますし、劇場版も公開される度にどんどん話が難しくなって興収がダウンしています。もはや、東映の屋台骨を支えているのは、子会社でアニメ製作を手がける『東映アニメーション』なのです」(同前)
やくざ映画が当たらず…
やくざ映画で黄金期を築いた東映だけに、暴力団の抗争、警察の癒着・腐敗などを描いた柚月裕子さんの原作を映画化した「孤狼の血」シリーズは話題となり、評論家の評価も高かったものの、18年と21年公開の2作の累計興収は16億円ほどにとどまった。
「やくざ映画のみならず、東映の“十八番”で他社が成功しているんです。高倉さんの生前最後の映画主演作となった『あなたへ』(12年)は、東宝配給で興収23.9億円を記録しました。また、吉永さんはこのところ、松竹やワーナーの作品にも出演。最新主演作の『てっぺんの向こうにあなたがいる』(10月31日公開)の製作・配給は、岡田裕介社長と昵懇だった、木下直哉氏(59)率いる『木下グループ』傘下の『キノフィルムズ』が手がけています。東映は不良ものの『ビーバップ・ハイスクール』を当てましたが、東宝はいずれも人気コミックを実写化した『クローズ』シリーズ、『今日から俺は!!』。松竹はEXILEらが所属するLDHの人気グループメンバーたちが主要キャストを占めた『HiGH&LOW』シリーズを当てました」(映画担当記者)
現状、今年の公開作品では、いずれも東宝配給のアニメ作品「名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)」と「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」が100億円を大きく突破。吉沢亮(31)主演の「国宝」も100億を突破しそうな勢いだ。
対する東映の作品は笑福亭鶴瓶(73)と原田知世が夫婦役を演じた、実話を元にしたオリジナル作品「35年目のラブレター」が唯一、ヒット作の基準となる興収10億円超えを果たした。
「東映のこれから公開される作品では、真藤順丈さんの直木賞受賞作を実写化し、米軍統治下の沖縄を舞台にした妻夫木聡さん(44)主演の『宝島』、舘ひろしさんが過去を捨てた元ヤクザの漁師役を演じる『港のひかり』が期待できます。そもそも、どの映画会社もそうですが、『自分で映画をつくりたい』という目標を持って入社してくる社員は年々減っています。それでも、23年に就任した吉村文雄社長は、世界進出を見据え中長期VISION『TOEI NEW WAVE 2033』を掲げています。キャリア採用や、海外での現地採用、独自のアカデミーによるクリエーター育成を行い、人材を充実させることが盛り込まれています。東映の未来は、このプロジェクトがどこまで成功するかにかかっています」(同前)




