タワマンに住んで高級車…「嫌味なキャラ」に反感 四千頭身・後藤が「没落」した納得の理由

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飽きられていった「脱力系」

 ネタの内容自体も次第に飽きられていった。脱力系というスタイルは、一度流行が過ぎると「覇気がない」「何が面白いのかわからない」と受け取られやすくなる。後藤の小声ツッコミも最初は新鮮だったが、徐々にその無気力さが「やる気のなさ」と同一視されるようになっていった。もちろん、実際にはネタ作りに努力を重ねていて、真剣に芸と向き合っていたはずだが、明確な結果を出さない限り、表層的な見方をされてしまうことは避けられない。

 また、後藤個人のキャラクターも、メディアとの相性が悪かった印象がある。もともとあまり饒舌ではなく、自己表現においても積極的ではない彼は、いわゆる「コメント力」を求められる地上波のバラエティ番組においては、どうしても不利になってしまう。

 ブームの最中には、その内向的な性格が「新しい」「気取っていない」「スタイリッシュ」などと評価されていたが、やがて「何を考えているのかわからない」と思われてしまうことになった。その上で、タワマンに住んで高級車を買うといった「嫌味なキャラ」を押し出すようになっていたのだから、反感を持たれるのも無理はない。

 トリオの中ではもともと後藤がリーダー的な存在だったが、徐々に都築拓紀、石橋遼大の2人が個性を発揮して仕事を増やしていくようになり、現在では後藤は給料の額でも2人に追い抜かれてしまっているのだという。前述の「マルコポロリ!」でもそれ以外の番組でも、このエピソードが頻繁に取り上げられており、彼の凋落を象徴する話となっている。

 ブームはいつか終わりが来る。四千頭身はお笑い第七世代ブームの最先端を走る存在だったために、ブーム終焉のときに最も大きなダメージを負うことになってしまった。四千頭身の精神的支柱だった後藤も、今では没落した姿をさらけ出すことでしか話題にならなくなっている。

 しかし、お笑いの世界は良くも悪くも実力の世界である。四千頭身が今後どうなるのかは誰にもわからない。彼らが世間の人を驚かせるような面白いネタを作ることができれば、再び人気を獲得することもあるかもしれない。栄光と没落の両方の味を知っている四千頭身に未来はあるのか。ここからの奮起に期待したい。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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