「参院選前に官邸から指令が」 証券口座乗っ取りの補償問題で「金融庁」が業界に対して強気になる裏事情【霞が関インサイド】
攻防続く「補償問題」
金融庁の集計によると、こうした証券口座の乗っ取りで生じた被害額は、6月末までに累計で約5710億円に達した。犯行がピークだった4月だけで3000億円近い多額の被害が発生したが、この時期に証券各社は複数の認証手続きを講じる「多要素認証」を相次ぎ導入して安全対策を強化。
これに伴い、乗っ取り被害は減少し、6月の被害額は約380億円まで減った。さらに証券各社は指紋や顔認証を使った生体認証の導入準備も急いでおり、乗っ取りによる被害は今後も減少する見通しだ。
問題は乗っ取り被害の補償である。銀行やクレジット会社では、IDやパスワードを盗まれて被害が生じた場合、顧客によほどの過失がない限り、その被害は全額補償される制度がある。だが、証券会社の取引約款では、口座を乗っ取られた顧客に対する補償の仕組みは存在しないのだ。
業界関係者は「顧客名義の証券口座で売買された以上、その取引で生じた損害を補償すれば、損失補填になりかねない」と主張する。株式のネット取引が普及する中で、現行の取引約款は口座乗っ取りによる不正売買を想定していないのだ。
かくして当初は強硬な姿勢を崩していなかった証券各社だが、現在は「官邸からの指令」を受けた金融庁の説得工作に折れつつある――。
〈有料版の記事【霞が関インサイド 証券口座乗っ取り問題、補償を巡る「金融庁vs証券業界」の内幕 背景にある「官邸からの指令」と両者の“本音”とは】では、現在進行形の攻防の内幕について報じている〉
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