デビュー30年目で初の医師役 松本潤主演ドラマ「19番目のカルテ」は「評価」を獲得できるのか
評価も得られるか
「19番目のカルテ」もシリアスだろう。問題は評価を得るかどうか。サッカーの試合にたとえると、勝つのは間違いないが、ゲームの内容が問われる。松本と制作者側は視聴率と評価のどちらも獲るつもりだろう。
第1回の徳重は、左足首の骨折で整形外科に入院していた居酒屋店主・横吹(六平直政)が、喉の痛みを訴えていたため、問診する。横吹も整形外科も望んでいなかったから、押しかけ問診である。病院敷地内で見掛けた横吹が左肩を痛そうにしていたのが気になっていた。
徳重は苦しむ横吹をよそに、穏やかな口調でゆっくりと問診を行う。家族構成から飲酒についてまで聞いたので、横吹は「関係ないこと聞くな!」と怒鳴る。それでも徳重は「大事なことなんです」と意に介さなかった。
横吹の問診が長引いたため、新米の整形外科・滝野みずき(小芝風花)まで「いい加減にしてください!」と金切り声を上げた。咽頭痛なのだから、いち早く咽喉科に連れて行くべきだと考えていたのだ。
しかし、徳重の診断は心筋梗塞。問診と観察によって、左腕や左肩、喉の痛みなどが確認されたことから分かった。滝野も途中で気づき、徳重の診療技術に目を見張る。
企業内デザイナー・黒岩百々(仲里依紗)は全身の強い痛みに苦しんでいたが、どの医師からも「異常なし」と診断されていた。ドクターショッピング扱いまで受けていた。だが、徳重は病名を突き止める。原因不明の慢性疾患である線維筋痛症だった。
この病気は免疫の異常や炎症などが見られない。だから、どの医師も病気を見抜けなかった。徳重は検査をして異常がないことを確認したうえで、問診によって線維筋痛症であると特定した。徳重は患者を見捨てない医師なのである。
おそらく、滝野もこれから総合診療科医を目指す。貧しい人々の病気をなんでも治そうとした『赤ひげ診療譚』(山本周五郎)の医師たちに憧れているからだ。現代で赤ひげ型医師に近いのは総合診療医。滝野の成長物語もストーリーの柱の1つになるのだろう。
見どころはまだある。魚虎総合病院は院長の北野栄吉(生瀬勝久)と外科部長の東郷陸郎(池田成志)の間に確執がある。各診療科医たちの関係もぎこちない。
修復するのは徳重だろう。各診療科に出入りが出来る立場で、相手の話を聞くのが得意だからである。
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