「これは先生が浮気をした時の歌ですか?」 石川さゆりが作詞家の恩師に尋ねた「紅白の定番曲」が描く“大人の世界”

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苦労は歌の肥やし

 石川の来し方は平坦なものではなかった。

 同世代は同じホリプロの森昌子と山口百恵。この二人と桜田淳子の「中三トリオ」に石川は埋もれた。劣勢を跳ね返したのは77年の「津軽海峡・冬景色」のヒット。その後、結婚、出産を経験し、「天城越え」のヒットに恵まれたものの、89年に離婚。

 結婚生活8年の間には嫁、妻、母、歌手の一人4役を一身に背負った。「味噌汁がしょっぱすぎる」といわれた嫁姑騒動などもあった。石川は「頑張ったけど、ダメでした」と語っている。

 その後は浮名を流すこと数回。宮崎で手広く事業を展開するバブル紳士絡みのスキャンダルなど、修羅場をくぐりながらも紅白に出続けた。

「天城越え」が発売されてから40年余り。衰えを感じさせず、いや、むしろ年を重ねてますます深まる艶や迫力、情感溢れる声が人々の心に響く。

 さまざまな苦労は歌う肥やしにもなった。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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