独走「阪神」に気になる“3つの死角” 「14勝18敗」のデータが示す“不安要素”とは

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藤川監督の采配にも一抹の不安?

 特に怖いのが中日ではないだろうか。今季の阪神は直接対決で中日に5勝7敗と負け越しており、オールスター前の2試合も甲子園で2連敗を喫した。他にDeNAは昨季を含めて過去2度、下克上を遂げた実績がある。もちろん昨季覇者の巨人も岡本和真が戻ってくれば侮れない存在となるだろう。

 そして最後の不安要素が藤川球児監督の采配である。今季は就任1年目ながら53勝35敗2分の好成績で首位を独走。新人監督の手腕を評価する声が多いのも事実だ。

 一方で、継投ミスや不可解な采配を振るう場面も少なくない。最たる例が、5点差をひっくり返された前半戦最後の試合だろう。それまで先発で起用していた伊原陵人を8回から投入。イニング跨ぎをさせた末に、サヨナラを許した一戦だ。藤川監督はコーチを経ず、いきなり監督に就任したこともあり、采配に関してはまだ勉強中という側面もあるだろう。

藤川監督は10試合近くも“采配負け”?

 ただ、阪神の戦力を考えれば、もっと勝っていてもおかしくない。今季は佐藤輝明を筆頭にセ・リーグ屈指の破壊力を誇る打線は前半戦だけで306得点を挙げた。2位で並ぶDeNAと広島の265得点に大きな差をつけている。さらに投手力も盤石で、200失点はもちろん両リーグを通じて最少。防御率1.99という驚きの数字を叩き出している。

 しかし、ピタゴラス勝率と呼ばれる指標を見ると、阪神はその実力ほど勝てていないことが分かる。ピタゴラス勝率とは、チームの総得失点から見込まれる勝率を計算するもので、今季の阪神のピタゴラス勝率は.701。これを勝敗に置き換えると、62勝26敗(2分)となる。今季の阪神は現時点で62勝していてもおかしくないというわけだ。

 ところが実際は53勝しか挙げられておらず、勝利数は9つも少ない。つまり、藤川監督は10試合近くを采配で落としているとも言い換えられる。その証拠が今季の阪神は、1点差試合に弱いこと。開幕からの成績は14勝18敗と負け越している。

 CSになれば、総力戦となり、1点を巡る攻防が多くなる。つまり、阪神にとって苦手な接戦続きになることも予想される。

 後半戦の残り53試合で阪神はどんな戦いを見せてくれるのか。理論派の藤川監督ならそのプランをすでに描いていてもおかしくないが、お手並み拝見といきたい。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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