独走「阪神」に気になる“3つの死角” 「14勝18敗」のデータが示す“不安要素”とは
プロ野球はオールスター2試合を挟み、26日から後半戦が始まる。セ・リーグは阪神が2位DeNAに9.5ゲーム差をつけて早くも独走態勢。2年ぶりのリーグ優勝を果たす可能性は極めて高いだろう。
ただ、前半戦の最終戦となった21日の巨人戦で、5点差を守り切れず逆転負け。後半戦に向けて一抹の不安を残す締めくくりとなったのも事実だ。
【八木遊/スポーツライター】
***
V確率100%の鉄板データとは
プロ野球史をひもとくと、前半戦最後の“1敗”が今季の阪神を大きく左右する可能性がありそう。もし勝利で前半戦を終えていれば、DeNAに10.5ゲーム差をつけていたからだ。
過去に10ゲーム以上の差をつけてシーズンを折り返したチームは、昨季のソフトバンクまで両リーグでのべ11チームあったが、リーグ優勝を逃したチームは皆無である。つまり阪神は、V確率100%の鉄板データをみすみす逃してしまったということになる。
それでも交流戦を除けば、投打にわたってセ・リーグのライバル球団を圧倒。ケガなどでよほどの戦力ダウンがない限り、このまま逃げ切るだろう。ただ一方で、クライマックスシリーズ(CS)となれば話は別だ。阪神にも少なくない不安要素がある。
まず前提として、現行のCSルールは優勝チームにかなり有利なものとなっている。文字通り1勝の“アドバンテージ”が与えられるほか、6試合すべてをホーム球場で戦うことができる。
また、2~3位のチームが3試合制のファーストステージにエース級の投手をつぎ込むため、ファイナル序盤は投手力にも小さくない差が生まれる。そのため、アドバンテージを生かした優勝チームがあっさり3連勝を決めることも珍しくない。
それでも勢いがモノをいう短期決戦では、“下克上”があるのも醍醐味の一つだ。昨季セ・リーグ3位から日本一に上り詰めたDeNAの快進撃は記憶に新しいところ。たとえ公式戦で盤石な戦いをしていても、CSでアドバンテージがあろうとも、日本シリーズ進出が確約されているわけではない。
甲子園で5勝10敗と大きく負け越し
圧倒的な戦力を誇る今季の阪神も決して例外ではなく、少なくとも3つの不安要素を抱えている。
1つ目は、阪神のCSでの勝負弱さだ。阪神は過去にCSに12回出場しているが、日本シリーズに進出したのはそのうち2回だけ。ファーストステージを含めた通算成績は16勝24敗1分と大きく負け越している。
ペナント覇者として迎えた2年前はファイナルで広島に3連勝したが、それを含めてもホーム・甲子園球場では通算5勝10敗という成績が残っている。1試合の重みが違うCSにおいて、時に虎ファンの大声援は選手にとってプレッシャーとなるのかもしれない。実は今季の阪神も敵地の29勝16敗1分に対して、本拠地で24勝19敗1分と、甲子園の大声援を味方につけられているわけではない。
2つ目の不安要素は、このまま独走Vを決めた時の弊害だ。あまりにも容易く優勝してしまうと、シーズン終盤の緊張感ある試合が少なくなってしまう。CSに向けて、これはプラスとはならないだろう。
さらに、今季は2位DeNAから5位の広島までの4球団が3ゲーム差以内という大接戦を演じている。負けられない戦いを制してきた“格下”が勢いに乗ってファイナルステージに乗り込んでくることになる。
[1/2ページ]