中日は「過剰な地元重視」のドラフト戦略を見直すべき 球団内部からも異論が出る“異常事態”
共通の問題
彼らが苦戦している原因はもちろん一つではないとはいえ、ドラフト上位で入団した地元選手に対しては、共通する難しい問題があるそうだ。
前出の球団関係者は以下のように指摘する。
「地元出身のスターを何とか作りたい――。これは、球団だけではなく地元のマスコミや関係企業にも強いですね。ドラフト1位の地元選手というだけで、活躍する前からあらゆる方面から引っ張りだこになっています。どの球団もこうした側面はありますけど、中日はそれがより強い。そうなると、どうしても野球に集中できない環境にあるのではないでしょうか。周囲の声や、地元企業などの付き合いに左右されず、マイペースで取り組むことができる選手ばかりではありません。球団も周りも、活躍する前からスターを作ろうとし過ぎているのかもしれません」
中日の親会社は、中日新聞社であり、地元の選手が活躍することで中日新聞や中日スポーツなどの部数を伸ばしたい思惑もある。彼らの“過剰な期待”が、とりわけ1位指名の選手の成長を妨げているのではないか。
中日以上に報道が多い阪神では、周囲の声に惑わされない選手のメンタリティーを重視して選手をドラフトで指名しているという。そういう意味では、中日も、ドラフト戦略として考慮するならば、“地元出身”よりも重視するべき点がある。
中日以外では、ソフトバンクは、「実力が同程度であれば、九州出身の選手を優先する」と言われている。また、日本ハムは、スカウト会議後には、北海道出身の選手が、どれだけリストアップされているかとの観点から報道されている。
本末転倒
だが、過去10年間の指名選手を振り返ると、地元出身の上位指名は、ソフトバンクが大津亮介(2022年2位)、日本ハムも伊藤大海(2020年1位)だけであるほか、下位指名も中日と比べると、地元選手はかなり少ない。
ソフトバンクは、育成ドラフトで多くの選手を獲得しており、その中には九州出身の選手も多く含まれている。だが、トータルで見ると、ソフトバンクと日本ハムは、中日に比べると地元選手を重視していない。
数少ない地元出身の選手から、伊藤のように球界を代表する投手が出てきている。これは、日本ハムのスカウティングが機能している証拠だ。
1993年にJリーグが誕生して以降、プロ野球も地元に根付いたチーム作りが盛んに言われるようになった。しかしながら、地元出身の選手にこだわって、チームが強くならない。これでは“本末転倒”だ。
中日も振り返ってみれば、選手、監督として長く球団に貢献した星野仙一を筆頭に、山本昌や立浪和義、荒木雅博、川上憲伸、福留孝介、井端弘和ら地元出身ではないスター選手が多かった。チームが浮上するためには、今一度ドラフト戦略を根本的に見直す必要があるのではないか。
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