「記録的猛暑」時代の住まい選び 20XX年のマンション資産価値を決める物件の“常識”とは
2023年度の新築マンションの約3分の1がZEH
ZEHマンションが補助金の対象となったのは、2018年度のこと。これをきっかけに、大手デベロッパー各社がZEH仕様のマンション開発に本腰を入れ始めた。
その成果は、数字にも表れている(次図)。
全国の新築集合住宅に占めるZEHマンションの割合は、2022年度から急増。2023年度には47%と、ついに5割に迫った。中でも、創エネ要件を持たない「ZEH-M Oriented」の割合が突出していて、2023年度は新築マンション全体の約3分の1(34%)を占める。
※「ZEHマンションの割合」は、住宅着工統計における当該年度の「共同住宅」・「長屋建」の新設戸数に対するZEHマンションの割合として算出した。
では、なぜZEH-M Orientedが多いのか。背景には、高層マンション特有の制約があるようだ。
高層マンションでは、住戸の総数に比して屋上面積が限られるため、太陽光パネルを十分に設置できない。そのため、創エネ要件を外した「ZEH-M Oriented」が現実的な選択肢として採用されているのである。
2030年には「ZEHレベル」が「標準」に
ZEHマンションは「光熱費を抑えられるエコな住まい」というだけではない。すでに、購入時の意思決定にも影響を与え始めている。
一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が2024年12月25日に公表した「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 調査発表会2024」資料によれば、ZEHマンション購入者のうち、4割以上が「ZEHであることを意識した」「やや意識した」と回答している(次図)。
つまり、ZEHであるか否かが「選ばれる住まい」の条件になり始めているのだ。
この動きは今後、中古マンション市場にも波及するだろう。ZEHか否かで、リセールバリューに差がつく時代が、すぐそこまで来ている。
2025年4月からは、マンションを含むすべての新築住宅に省エネ基準の適合が義務化された。ただし、現行の省エネ基準はZEH水準に及ばない。政府は2030年を目標に、この義務基準そのものをZEHレベルに引き上げる方針を打ち出している。
制度上も、そしてマンション市場も、ZEHマンションを「標準」とみなす環境が整いつつあるのだ。
猛暑、電気代の高騰、そしてエネルギー供給の不安定化。こうした複合的リスクが現実のものとなっている今、「ZEHマンションに住むこと」は、暮らしの安心材料であり、将来的な資産価値を裏打ちするファクターでもある。
これから先、「日本の夏」をどう乗り切るか――。築年数でも駅距離でもない、「ZEH」という新たなラベルが、答えを握っているのかもしれない。
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この記事の前編では、住居選びで「酷暑マンション」を避けるうえで、“建物の外観だけに捉われると見落としがち”な「最重要ディテール」について、マン点氏のレポートをお届けしている。
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