ピリッとした緊張感、切れ味鋭い笑い…「審査員」千原ジュニアに注目が集まるワケ

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粗品の迫力と緊張感

 今年3月に行われた「ytv漫才新人賞決定戦」(読売テレビ)で霜降り明星の粗品が審査員を務めた際、その鋭く的確なコメントが大きな話題を呼んだことがあった。言葉の一言一言に重みがあり、笑いに真剣に向き合っている人間特有の迫力と緊張感があった。お笑いコンテストの審査員に求められているのはそういうことである。

 千原ジュニアも、粗品のようなピリッとした緊張感をかもし出すことのできる人物である。しかも、彼は粗品よりもさらに長いキャリアと多面的な視点を持っており、演者の心理やネタの背景なども踏まえた上で評価をすることができる。

 ネタ、トーク、大喜利、MCなど何でもこなすジュニアの普段の活動を見ていると、笑いの構造に対する理解が非常に深いことがわかる。彼が「芸人にリスペクトされる芸人」であり続けているのはそのためだ。

 また、ジュニアには一切の媚びがない。テレビ映えするキャッチーなコメントをする能力がある一方で、場の空気に流されず、時には厳しく本質を突くような発言をすることもある。そのぶれない態度が多くの芸人や視聴者の信頼を集めている。笑いという曖昧なものに対しても、自分なりの明確な基準を持って審査をすることができる。

 新しく作られたお笑いコンテストでは、賞自体の歴史がないのをカバーするためにも、審査員の権威性がより強く求められるようなところがある。その点、「ダブルインパクト」が千原ジュニアを起用したことは大きい。彼の存在がこの大会に本物の緊張と真剣さをもたらしてくれるはずだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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