名手「鈴木誠也」も“外野脱落”で、MLB「日本人野手」が絶滅危機…高すぎる「守備の壁」に「村上・岡本」への不安

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ゴールドグラブ賞10回のイチローは別格

 183cm、83kgと、日本球界では恵まれた体格に分類される鈴木だが、190cm超えが当たり前のメジャー選手の中に入れば、むしろ小柄な方。やはり日本人選手は、骨格や筋肉の付き方、地肩の強さなどが外国人選手に比べると、見劣りするのが現実だ。もちろんこれは鈴木に限ったことではない。

 例外だったのが、レジェンドのイチローだろう。これまで日本人外野手は、新庄剛志や福留孝介などメジャーリーガーに引けを取らない守備力を見せた選手もいた。中でもイチローは、鈴木よりもひと回り小さな体の持ち主だったが、40代半ばまで攻守にわたってメジャーの一線級で活躍。日本人選手では唯一となるゴールドグラブ賞を10回も受賞している。

 逆にいえば、日本人選手が守備面でメジャーリーガーと優位に競えるのは、イチローレベルのスピードと身体能力、とりわけ肩の強さを備えていなければ難しいといえるだろう。

 そんなイチローが全盛期だった20年前と今季を比べると、日本人野手の守備機会は30分の1以下にも満たない。今季、鈴木が守備に就いた30試合で記録した守備機会(捕殺+刺殺+失策)は59回。日本人野手6人がメジャーでプレーした2005年は、合計で1839回もの守備機会があった。

 今では想像し難いが、その6人のうち3人が内野手だったことも時代を感じさせる。内野手としてプレーした3人のうち、井口資仁と松井稼頭央は二塁手としてプレーしたが、西武時代は強肩で鳴らした松井稼でさえ、メジャーでは遊撃手失格を言い渡され、二塁手に転向したほどだ。

 その後は岩村明憲が二塁手として活躍を見せたが、それに続いた川崎宗則や西岡剛は打撃だけでなく守備でも相当苦しんだ。ちなみに日本人選手がメジャーで最後に二遊間を守ったのは、16年の川崎まで遡らなければいけない。

守備が“ネック”村上宗隆&岡本和真の動向は

 いつしか野球ファンの間では、高い身体能力が必要な二遊間にメジャーで通用する日本人選手はほぼいないというのが共通の認識となっている。それは山田哲人、坂本勇人、菊池涼介といった超一流がメジャー挑戦を果たせなかったか、ためらったことにも表れている。それだけならまだ良かったが、今や内野手はもちろん、その懸念は外野手にまで及んでいる。

 今季は実質、ほぼ皆無となったしまった日本人野手だが、そのリストに加わろうとしているのが、ヤクルトの村上宗隆であり、巨人の岡本和真である。両選手とも今季はケガに見舞われ、離脱期間が長引いているが、もし2人がメジャーに挑戦するとしても、あくまでも評価されているのはその打撃だ。

 特に村上は三塁の守備に課題を抱えており、それがライトへのコンバート案にもつながっている。メジャー挑戦を叶えたとして果たしてどのポジションを守れるのかという問題も浮上する。守備で苦労する鈴木の姿を見て、今季オフのメジャー挑戦をためらってもおかしくないだろう。

 これまでイチローや大谷といった異次元のスター選手を輩出した日本のプロ野球。いずれ“二遊間”でゴールドグラブ賞を獲得するような選手が現れても不思議ではない。絶滅危機を迎えた日本人野手の今後にも注目が集まる。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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