名手「鈴木誠也」も“外野脱落”で、MLB「日本人野手」が絶滅危機…高すぎる「守備の壁」に「村上・岡本」への不安
1995年に野茂英雄が扉を開いて以降、日本人選手がメジャーリーグに挑戦するのは珍しくない光景となった。今季はNPBを経験した12人の日本人選手がメジャーでプレーしているが、そのうち実に9人が投手だ。打者よりも投手が多い傾向は30年前から変わっていない。
今季の日本人打者は、二刀流の大谷翔平を含めて3人。他に鈴木誠也(カブス)と吉田正尚(レッドソックス)がプレーしている。そのうち大谷と鈴木がタイトル争いに加わる活躍を見せている。
【八木遊/スポーツライター】
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大谷翔平、鈴木誠也、吉田正尚の共通点とは
大谷は前半戦を終えた時点で、ナ・リーグ本塁打部門で1位に立っている。リーグをまたいでの3年連続本塁打王を視界にとらえている大谷だが、打率と打点はどちらもトップ10圏外。特に打点の少なさは、シーズン序盤からたびたび話題になっていた。
そんなナ・リーグの打点部門で1差の2位につけているのが鈴木である。メジャー4年目を迎えた鈴木は、今季すでに本塁打と打点でメジャーでの自己ベストを更新。カブスの中心打者としてなくてはならない存在になっている。
また右肩のリハビリが長引いていた吉田もオールスター休みを前にようやく復帰。9か月半ぶりの復帰戦でいきなり3安打を放ちアピールに成功した。自慢のバットコントロールを発揮し、一日も早く遅れを取り戻したいところだろう。
大谷、鈴木、吉田、日本人打者の3人に共通しているのが、今季はほぼ指名打者(DH)に専念していることだ。大谷は投手としてマウンドに上がるようになったが、吉田は復帰後、すべての試合がDHでの起用となっている。
3人の中で唯一、今季守備に就いている鈴木だが、前半戦に出場した92試合のうち約3分の2がDHでのもの。ライトもしくはレフトの守備に就いたのは30試合に留まっている。つまり、今季のメジャーリーグで“日本人野手”と辛うじて呼べるのは鈴木だけという状況だ。その鈴木も大半がDHでの起用となっており、まさに日本人野手は“絶滅危機”に陥っているといえるだろう。
鈴木の守備指標はメジャー平均以下?
では、なぜこのような事態になっているのか。そもそも日本人打者の数が少ないこともあるが、吉田はメジャー1年目の2023年に左翼手として87試合に出場したものの、オリックス時代から守備の評価は高くなかった。
レッドソックスでも守備範囲の狭さや肩の弱さが守備指標にくっきり表れていた。1年目に吉田が記録した守備における得点価値を示す「Run Value」という指標は「-12」。0が基準となるため、吉田は守備でチームの足を引っ張っていたことを意味する。ちなみに、「-12」という数値は2023年に500イニング以上に出場した全304人の野手の中で297位。下から数えて8番目という壊滅的なものだった。2年目を前に早々と守備失格の烙印を押されたのは言うまでもない。
一方の鈴木は、1年目の22年から正右翼手として出場を続けていた。ただ、守備における「Run Value」は、1年目から「-3」「-2」「-2」と推移。吉田のそれよりは上だが、メジャーリーグでは平均よりやや下ということがわかる。チームも鈴木の守備力に懸念を感じたのだろう。昨季からDHでの起用が増え始め、今季はピート・クロウアームストロングなど鈴木より“守れる外野手”が3人そろったこともあり、開幕からDHでの起用が中心となっている。
走攻守三拍子そろった選手という触れ込みでカブスに入団した鈴木が、専らDHで起用されている事実は重い。広島時代の鈴木は、広い守備範囲と強肩で鳴らし、ゴールデングラブ賞を5回も獲得した。そんな名手でさえ、メジャーでは平均レベルにも及ばないのだ。これらの事実から今後懸念されるのが、日本人野手はよりメジャー挑戦を躊躇してしまうのではないかということだ。
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