「阿部退場」がSNSで話題沸騰 過去にあった審判と大舌戦を演じた末の“珍退場劇” 「ヘタクソとは言ったが、バカ野郎とは言っていない」と反論も

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 巨人・阿部慎之助監督が7月2日の阪神戦で、リクエスト判定に抗議したとして、監督では球団史上3人目の退場を宣告され、SNSでも「阿部退場」がトレンド入りした。阿部監督の場合は、責任審判から「これ以上、言ったらダメですからね。退場ですよ」と通告され、「はい」と素直に引き下がった“静かなる退場”だったが、過去には審判と丁々発止の大舌戦を演じた末の珍退場劇もあった。【久保田龍雄/ライター】

最後まで平行線

 退場を宣告された直後、理由とされた暴言の内容が異なっているとクレームをつけたのが、大洋・近藤貞雄監督だ。

 1986年5月9日の中日戦、1点リードの9回無死一塁、守護神・斉藤明雄が打者・内田強に対し、カウント1-0から2球目を投じようとモーションに入った直後、中日・高木守道三塁コーチがサイン確認のためにタイムを要求し、柏木敏夫三塁塁審がこれを認めたことが騒動のきっかけとなる。

 斉藤はそのまま投球し、ストライクと思われたが、柏木塁審の通告を受けた谷博球審がタイムをかけていたため、無効となった。近藤監督としては当然収まらない。直後、ベンチを飛び出して三塁に向かうと、「(投手が)セットに入ったときにタイムをかけるのは、(打者の目にゴミが入ったなど)やむを得ない場合以外は認められないはず」と抗議した。

 これに対し、柏木塁審が「セットに入っていても、静止していれば、タイムはかけられる」と説明すると、近藤監督は「投球モーションに入ってからの不用意なタイムを認めて、斉藤が故障でもしたらどうするんだ」と難詰。柏木球審が納得のいく説明ができないと見るや、「ヘタクソ!」の暴言を吐き、史上最年長の60歳9ヵ月(当時)の退場劇となった。

 ところが、柏木塁審が「バカ呼ばわりされたので退場にする」と事実と異なる通告をしたことから、近藤監督は「ヘタクソとは言ったが、バカ野郎とは言っていない」と反論。

 さらに柏木塁審が「だったら、ヘタクソと言ったから退場」と安易に訂正したため、「退場なら退場で結構。しかし、なぜその理由をやたら変えるの?」と一貫性のなさを追及するなど、両者の言い分は最後まで平行線だった。

大人げない意地の張り合い

「言った」「言わない」の水掛け論が長引いた末、遅延行為で退場になったのが、オリックス・仰木彬監督だ。

 2005年6月4日の広島戦、3対0とリードの8回2死、代打・浅井樹のタイムリーで1点を返されたオリックスは、なおも2死一、二塁のピンチ。神部年男コーチがマウンドに足を運び、続いて仰木監督も土山剛弘球審のもとへと向かった。

 仰木監督は加藤大輔が浅井に打たれる直前、ボールと判定された球を「ストライクやないか?」と確認したが、土山球審が「外れてます」と答えると、「そうか」と頷き、ベンチに引き揚げようとした。

 ところが直後、土山球審が「ピッチャー・菊地原(毅)」と交代を告げたことから、「えっ?」と目を白黒させて、「交代は告げていない」と抗議した。

 これに対し、土山球審は「ストライク、ボールのことを聞かれる前に“ピッチャー・菊地原”と言われた」と主張して譲らない。

 仰木監督はなおも「普通代えるときに、投手コーチがベンチに帰ってくるか?」と反論したが、取り合ってもらえない。「言った」「言わない」の水掛け論で、試合は44分も中断し、仰木監督は遅延行為を理由に、史上最年長の70歳1ヵ月の退場を宣告されてしまう(その後、同年7月16日のロッテ戦でも暴言で退場処分になり、自らの記録を1ヵ月更新)。

 大人げない意地の張り合いで長時間待たされ、大迷惑のファンにとって、せめてもの救いは、中断の間、広島・野村謙二郎、ベイル、オリックス・阿部真宏、村松有人らがサインボールを次々にスタンドに投げ込み、ファンサービスに努めてくれたことだった。

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